【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

今年も上半期が終わり、例年なら夏休みの計画で心弾む7月も、依然新型コロナ拡散の脅威からなかなか本格始動できないもどかしい盛夏を迎えています。
動物園や水族館に博物館など、ミュージアム巡りとローカル列車の旅を一番の趣味とするナチュラリストにとって、「JR青春18きっぷ」のシーズン到来を毎回待ち望んでいます。この冬には、国立科学博物館や名古屋港水族館などの定番ミュージアムに、秘境駅路線の飯田線や四国の琴平電鉄を堪能し、国鉄時代からの宇高連絡船が歴史の幕を降ろす12月15日にはもちろん駆けつけて半世紀の思い出に浸りました。
そして迎えた春、3月1日の発売初日に切符を購入し、西は山口県岩国市の白蛇詣でに「ときわ動物園」、東は城陽市で越冬した瑞祥の福鳥・コウノトリのひかりちゃんが滞在している房総半島の鴨川市を訪ねて、いすみ鉄道と小湊線の列車の旅を思い描いていましたが、キャンセルせざるをえないコロナウィルス緊急事態宣言で、日常生活さえも支障が出る大変な状況が続いて今日の日を迎えています。
ナチュラリストのライフワークであるフィールド探査こそ、単独・時短で最小限の課題には取り組めますが、もうひとつの柱である啓蒙活動が閉ざされ、自然観察会や各種イベントの中止は、配布資料の定番である当連載の印刷物の需要も激減して残念に思っています。また、文献や映像資料の見直しも、時間があるからといってはかどるものでもありません。フィールドの夢を追い続ける想いが、健康で精神的にも平安な日常生活の礎となっていたことをつくづく実感したステイホームでした。
こうして迎えた7月、ようやく自然観察会と関連イベントが開催され、ナチュラリストの本分である郷土の自然財産である生き物たちとその生息地の環境保全の大切さを伝える啓蒙活動の舞台が整いました。2月11日から実に5ヶ月間の空白を経て7月12日に開催いただいた和束町教育委員会・町史編さん室主催の自然観察会への思い入れは、京都府初記録となる新種登録の淡水魚の発見につながりました!
そして、木津川市の「アスピアやましろ」に於いて7月25・26日に開催された「サイエンス夏祭り」では、今年もヘビやカメなど生きた教材を披露しての生き物講座です。やはりここでも強い思い入れが実り、前日にはレアなお宝生物をそれも2種類を発見することができ、和束町で見つけた新種の淡水魚共々、ホットな話題で鼻高々の実に楽しいイベントを満喫しています。
これら新発見の詳細は、あらためての経緯を追った報告で資料記録と致しますが、先ずは笑顔弾ける和束町自然観察会のショットと、室内イベント開催の英断を讃えたいサイエンス夏祭りのフォトレポートをお届けし、感謝の言葉としています。たくさんの人たちに支えられ、ロートルナチュラリストが暑い熱い夏を楽しんでいます。
和束町の新お宝生物・ナガレカマツカ紙面デビューを飾る前編をご覧下さい。

◎活動報告

先ずは待ちに待った7月12日の和束町自然観察会の記念撮影の一枚をご覧下さい。(写真①) 活動報告に欠かせない記録写真も、今回ばかりはマスク着用で筆者以外の人物の特定はできませんが、主催者の尾野和広先生(写真②右)には、アフターでタケノコご飯をごちそうになって、お代わりも4杯いただきました。何より、一緒に魚捕りや生き物探しをし、電車談義でも盛り上がるちっちゃな友達との久しくの時間は、コロナ鬱の何よりの特効薬となりました。
雨天で増水している和束川での生き物採集は回避の予定も、やはりあきらめきれずに前日に罠を仕掛けてお宝狙いです。(写真③) 会場から和束川に至る観察会コースの講師陣も、兵庫県三木市から駆けつけてくれた田中寿樹さん(写真④中)が昆虫と水棲生物を担当し、岡井勇樹君(同右)が竹内康先生と共に野鳥を、山村元秀先生が野草解説、両生・爬虫類担当のジュニアメンバー・松井優樹君はマムシを捕獲しての披露です。(写真⑤)
岡井昭憲先生にジュニアの福井惇一君、地元の小西逸男さん(写真⑥)も駆けつけてくれて珍蛇・シロマダラ発見のフピソードなどのお話を願うなど、和束町の野生生物生息調査に携わるナチュラリスト仲間の大半が勢ぞろいし、3月22日に中止となった観察会のリベンジ・集大成としています。そしてもう一人、林博之先生(同中)が悪条件の和束川で魚を採集しながら、解説をいただきました。(写真⑦)
この日も絶滅寸前種のスジシマドジョウ(写真⑧中)がたくさん採れ、絶滅危惧種のアカザ(同右)と共に和束川を代表する貴重なお宝生物であることはこれまでにもお伝えしました。そして、林先生と共に京都府南部では正式な記録のない絶滅危惧種のスナヤツメ発見に努めましたがこれまで見つけることはできませんでした。そんな折、木津川で見られるカマツカの仲間に、河川上流部に生息するナガレカマツカが新種登録されたと聞き、新たな目標ができました。
さすがにこの日は確認できませんでしたが、後日、ジュニア・優樹君と共にナガレカマツカ(同左と写真⑨)と思われる個体を採集し、林先生に鑑定いただきました。果たして、「髭が長い」「胸鰭分岐軟条12」「腹部の鱗数12」より間違いないだろうとのお墨付きをもらい、半年ぶりに県をまたいで琵琶湖博物館に報告に駆け付けました。まだまだフィールドの女神に愛されしナチュラリスト健在!…新種発見の朗報続編をお待ち下さい。