受賞作『夢見る帝国図書館』

宇治市は6日、第30回紫式部文学賞の受賞作品に、小説家・中島京子さん(56)の『夢見る帝国図書館』(文藝春秋、2019年)を選んだ、と発表した。贈呈式は、9月に発表する紫式部市民文化賞と合わせて、11月22日(日)に宇治市文化センターで行う予定。
文学賞に輝いた『夢見る帝国図書館』は、小説家の卵である語り手が、上野公園で偶然知り合った年上女性・喜和子さんからの提案で「旧帝国図書館が主人公」の小説を手掛けていく…というストーリー。明治・大正・昭和から平成に至る図書館の歩みの中に、近代日本文化を支えた人物の歴史が織り交ぜられる。

中島京子さん

中島さんは1964年東京都生まれ。東京女子大学を卒業。出版社勤務を経て39歳の時に『FUTON』で小説家デビューし、7年後に『小さいおうち』で直木賞を受賞した。このほか『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞を受けるなど受賞歴は数多い。近著に『樽とタタン』『キッドの運命』などがある。
山本正市長から受賞作の発表があった後、選考委員会の鈴木貞美委員長(国際日本文化研究センター名誉教授)が「審査員の満場一致で決まった。図書館を巡るエピソードを上手に膨らませつつ、ミステリーとファンタジーが交互に展開する、楽しめる作品」と紹介した。
中島さんは「作品には明治以降の作家たちが多く登場します。自分が物書きを生業とするにあたって、先達の仕事に負うところの大きさを考えずにはいられませんでした。さかのぼっていった先には平安朝の文学があり、紫式部に行き当たります。選考委員の先生方をはじめ、諸先輩から励ましをいただいたように感じています」とコメントを寄せた。
紫式部文学賞は、宇治市が「源氏物語」宇治十帖の主要舞台であることから、市民文化の向上や女性文学の発展を目指して1991年に創設。今回は、昨年1年間に発表された小説33点、随筆9点、評論など5点、詩集など11点、ノンフィクション4点、翻訳その他2点の合計64点から選考した。
なお「紫式部市民文化賞」の発表は9月7日(月)の予定。11月22日(日)には宇治市文化センター大ホールで両賞の贈呈式ならびに源氏ろまん30周年記念イベントを行う。