【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)

9月のホットニュース、テニスの全米オープン優勝の大坂なおみさんの快挙と共に、人種差別に抗議する黒いマスクが大きな話題となりました。オリンピックイヤーの今年、1968年のメキシコオリンピック200㍍走の表彰台で、2人の黒人選手がアメリカ国旗の掲揚に黒い手袋の拳を突き上げた抗議行動「ブラック・パワー・サリュート」と呼ばれる衝撃の光景がよみがえります。
そして1972年9月のミュンヘンオリンピックでは、パレスチナの過激組織「ブラック・セプテンバー」がイスラエル選手11名を殺害するテロ事件が起きています。水泳少年だった筆者、前回メダル無しの水泳で平泳ぎの田口信教選手が100・200㍍で金・銅メダルを獲得した偉業も、400㍍自由形優勝のアメリカ選手がドーピングで金メダルを剥奪されたことも重なって、喜びも半減したことを思い出しています。
あれから半世紀を経た21世紀を迎えて久しい現在、今なお人種差別や争いの絶えない国際情勢には、脳天気なナチュラリストも眉間にシワを寄せてしまいます。風化させてはならない9・11の悲劇と共に、人類の英知がブラック・セプテンバーの歴史を塗り替えてくれることを期待してやまないコロナ禍の9月も終わりを迎えました。
昨年は木津川で古クギを踏み抜くケガを負い、半月の入院生活で多大な迷惑をかけた暗い思い出の9月でしたが、今年はフィールド活動の充実と久しくのナチュラリスト仲間との再会に、何より嬉しかった後期からの城陽市立富野小学校・生き物クラブの指導依頼があって大いなる元気をもらいました。活動母体の「城陽環境パートナーシップ会議」でも、先ずは11月の「第19回城陽市環境フォーラム」の開催決定で再始動し、ライフワークとする自然観察会もこれからは滞りなく開催できることを期待している昨今です。
口元の笑みを隠す白黒のマスクが、不要となる日も近いことを信じてのナチュラリストの9月の活動報告は、ハッピーライフ・ホワイト・セプテンバーのフォトレポートです。差別や戦争のない世界を願い、『シンク・グローバル、アクト・ローカル』をモットーとするナチュラリストのピース劇場にお付き合い下さい。

9月の活動絵日記

先ずはご覧下さい。京都城陽ロータリークラブの例会にお招きいただき、地元の名士の方々を前にしてのスピーチでは、アニマルファッションがトレードマークのナチュラリストといえどもそこは精一杯の正装で臨みました。(写真①) 先祖の墓の移転の法事でもしなかった今年初のネクタイは、ムツゴロウ・畑正憲師匠作のシマフクロウ柄で、タイピンのコミミズクと共に鳥人ナチュラリストの勝負アイテムとなっています。
今や爬虫類派に宗旨替えの筆者、パイソン・蛇柄のラメ入りシャツにベルト、バンダナキャップもオーダーメードの蛇柄を蔵出ししています。現物持参こそ叶いませんが、ふるさとのお宝生物たちを資料と写真で紹介し、その魅力の一端を一年越しにお伝えすることができました。
というのも、昨年にお話をいただいていた折、当日2日前にケガによる入院でお世話いただいた島本憲司さん(同右)に多大なご迷惑をかけていました。今回、新種の淡水魚・ナガレカマツカ発見!の朗報を携えて、無事大役を果たすことができて胸のつかえも降りました。共に我が家名物・木津川産天然スッポン鍋の味を知る森澤博光さん(同左)と、また一緒に鍋を囲めるコロナ終焉の日が来ることを願っての記念撮影です。
9月の8日には、コロナ騒動以来ご無沙汰のスッポン鍋の会の常連・疋田努先生(写真②中)と伊藤雅信先生(同右)との久しぶりのご機嫌伺いです。京大を退職された疋田先生と、今年こそ南山城村の巨大スッポン捕獲で日本一奪還!をもくろむもコロナで見送りとなり、城陽市の木津川河川敷で蚕の原種・クワコを発見された京都工繊大の伊藤先生の調査も終了し、なかなか会えなかったお二人とのしばしの歓談で心も安らぎました。この日、左京区のフィールドソサエティー法然院・森のセンターに久山喜久雄さん(写真③中)を訪ね、自慢のナチュラリスト仲間を紹介し生き物談義に華が咲きました。
9月12・13日の和束町の野生生物生息調査報告会も、ナガレカマツカの発見でナチュラリストの強運を示すことができ、さらなる目標に向かって元気もでました。主管の教育委員会町史編さん室の尾野和広先生(写真④中)を現地案内し、一緒にナガレカマツカを捕獲確認してもらっています。淡水魚の専門家である林博之先生(写真⑤中)と、漁具の研究家でもある京大名誉教授の水野尚之先生(同右)の協力を得て、またひとつナチュラリストのお宝生物のエピソードが加わりました。
ナガレカマツカの公式発表を託した林先生は、宇治市のある河川でも生息を確認されましたが、調査用の漁具が盗難にあう被害がありました。また、ジュニアメンバーの松井優樹君と春樹君兄弟(写真⑥)も、京都市の山間部の河川で捕獲したものが林先生からナガレカマツカであるとのお墨付きを得ています。かくして、こんな河川上流部まで、優樹君とゆかりの新種登録のカマツカを求めて楽しい調査を続けています。(写真⑦)
木津川のスッポン漁も中川幾久夫・漁協支部長(写真⑧右2)と共に再開しました。本来は鳥少年の福井惇一君(同左)も、10月からの鷹の渡り調査を前に先ずは水辺の生き物調査がジュニアナチュラリストに課せられたノルマです。ナガレカマツカを飼育観察されている水野尚之先生(写真⑨中)宅に、両種の比較実験の為に頼まれていたカマツカを届けました。真理先生と共に京大名誉教授のご夫妻と、今日の獲物をかざした未来のプロフェッショナルたちとの記念写真が、いつの日か脚光を浴びることを夢見ているロートルナチュラリストです。

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