創建時の扉絵に「来迎図」/平等院鳳凰堂
来迎図が確認できた北扉。絵は肉眼ではほとんど分からない

世界遺産の平等院(1053年建立)で、江戸期の修理で取り外された鳳凰堂東面の中央扉についての報告が12日、あった。分析の結果、創建当初に自然の山々や菩薩の来迎図を描いた痕跡が確認された。

斜光によるサイドライティング撮影。顔料の凹凸が明瞭に(城野誠治氏撮影)

この中央扉は北扉と南扉の2枚。来迎図が確認できた北扉は高さ467㌢×幅162㌢で、南扉もほぼ同じ大きさ。1670年に取り外されて以来、堂の尾廊や院外収蔵施設で長期間保管されてきた。堂に残っていた古文書から、扉は創建当初のものと判明した。
2018年8~12月に補修がなされたことを受け、東京文化財研究所の早川泰弘氏・城野誠治氏が光学調査による分析を行った結果、両扉の中央付近に建物の屋根、柱が見え、北扉に描かれた屋根の直上には菩薩像が確認できた。
両氏の研究論文によると、X線による調査で両扉ともに大量の鉛が検出されたことが判明。絵画面全体に白色の顔料(鉛白)が下塗りとして使われていることが認められた。

書き起こしイメージ図(荒木恵信氏作画)

イメージ図を描いた金沢美術工芸大学の荒木恵信准教授は「来迎図の一つ。現状は絵具層の確認は困難だが、斜光により図様が浮かび上がってくる。絵具層の周りを彫り込むような侵食が進み、凹凸が形成されたと考えられる」とコメントを寄せた。
記者会見で、平等院の神居文彰住職は「菩薩が屋根の上まで降りてきている描かれ方は他になく、大胆で独創的な宗教画が平安時代にあったことが驚き」と話した。