【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
水辺の生き物シーズンが終わるや、あっという間に10月も過ぎ去り、早朝の木津川にはもやが立ち込めて朝露も霜になる日も近いことを感じさせます。
例年では、「初霜スッポン」と呼ばれる冬眠前の脂ののった旬の物を狙って木津川詣での10月ですが、今年はコロナの影響で岐阜大学での繁殖実験が中断の憂き目にあい、我が家名物・スッポン鍋の会も開催できない現状にあって、天気が崩れだした10月7日を最後にカミツキガメと大スッポンを期待して仕掛けておいた古川のモンドリを回収し、今シーズンの「川終い」として早々に切り上げた次第です。
そして、昨年に続いて今年も日本最大級のスッポンがいることで知られる名古屋の「川原神社」に甲長32㌢を筆頭とする大スッポン4頭を奉納し、繁殖用地もある弁天池に放生しました。美味なる自然の恵みの食材から一転、聖なる亀の神社に迎えられて神様の使徒となった木津川産ブランドスッポンたちのご利益で、来年度こそ日本一の大スッポン捕獲!のリベンジを果たせることを祈願してきました。また、いよいよ来年度より本格始動を予定している松井優樹君との「ニホンイシガメ復活プロジェクト」に向け、調査・研究に不可欠な詳細な記録法や標識技術を伝授し、繁殖を目的に造られた池に冬眠を前にした9頭を放して今年もカメのシーズンが終わりました。
一年の半分はTシャツ姿のナチュラリスト、衣替えの10月を迎えてロンTからトレーナー・スカジャンへと移り変わるこれからの季節、これまで喜々として報告してきたこれら爬虫・両生類に淡水魚などの話題も途絶えて寂しくなりますが、これからは「コウノトリ・ひかりちゃん再来!」を期待して鳥人ナチュラリストに衣替えです。
10月8日の琵琶湖博物館のリニューアルオープン内覧会では、展示されていた「淡水クラゲ」にナチュラリストのアンテナが反応し、来シーズンの目標も生まれました。母校・城陽市立富野小学校「生き物クラブ」の活動も再開され、活動母体の「城陽環境パートナーシップ会議」の年間最大行事「第19回城陽市環境フォーラム」も規模縮小ながらも開催決定に至って、気持ちの上でもコロナ禍の呪縛から解き放たれつつある晩秋の活動報告・フォトレポートにお付き合い下さい。
◎10月の活動報告
「鉄道記念日」の10月を迎え、各駅停車で行くローカル線の旅が趣味を超えた生き甲斐となっている鉄道マニアの筆者、学生時代に当時の国鉄で「日本最長鉄道一筆・鈍行列車、一枚切符の旅」の自慢の記録を懐かしんでいます。北海道の広尾駅から九州・鹿児島県は枕崎駅まで、同じ駅を二度通らない一枚切符の路線は全長1万2452・6㌔に及び、10月1日から38日間をかけて鈍行列車で踏破しました。
前人未到の記録は何よりの自信となって、翌年には「国鉄全線2万㌔踏破!」を果たしています。この頃から、もうひとつの趣味である動物園や博物館巡りにもこだわり、列車の旅は全国のミュージアム巡りと地方の資料館などにも足を運ぶ手段となりました。こうした全国各地の風土記を学び、民俗や歴史に接する機会がナチュラリストの活動に活かされてきたものと振り返っています。
木津川フィールドのセンサス調査で、しばし足を止めて愛でる「近鉄特急・しまかぜ」の絶景風景も、日が短くなってライトが点灯されました。(写真①) 今冬も再び、しまかぜを背景に瑞祥の福鳥、コウノトリ・ひかりちゃんを撮影できることを願っています。
10月8日、琵琶湖博物館のリニューアルオープン内覧会に招待を受け、ナチュラリスト仲間たちと共に役得イベントを満喫してきました。(写真②) 今年一番の成果、新種登録されたナガレカマツカ発見!の現物を大野和宜・城陽環境パートナーシップ会議会長(写真③左2)たちに確認していただき、やはり一昨年のリニューアルオープンで筆者が依頼を受けて完成したカメ類のコーナーを案内し、水没死することのない安全なオリジナルモンドリの設置と、水中での捕獲カメ類の映像などを観てもらいました。
そして、非常に珍しい淡水産クラゲ・マミズクラゲ(写真④)の展示に目が止まり、今回は仕事で参加できなかった和束町教育委員会町史編さん室の尾野和広先生から10年ほど前に伺った情報を思い出し、ナチュラリストのテンションが急上昇しました。また、宇治市歴史資料館に寄贈のいきさつをお伝えしたイケチョウガイ(写真⑤)も、企画展で絶滅に瀕する生き物に取り上げられています。時折しも、龍谷大学を退職された土屋和三先生(写真⑥左)から宇治川・源内のヨシ原の水辺の生物調査の打診があり、京都府では宇治川で再発見される可能性があるとして絶滅種登録を見送っているイケチョウガイもマミズクラゲと共に夢が拡がる来季の目標に加わりました。
さぁ、10月10日からは気持ちを切り替えてジュニアメンバーと脇坂英也先生の野鳥講習会に参加も、鷹の渡りにはまだ早いのかノスリ(写真⑦)とサシバが少々に、網場を拓いての鳥類標識調査の実施も残念な結果となりした。(写真⑧⑨) それでも、生き物の宝庫・和束町はナチュラリストの期待を裏切りません。一度に3匹のヒバカリを捕獲し、チョー貴重なキクガシラコウモリの生息地に松井優樹君と福井惇一君を案内しての記念撮影です。(写真⑩⑪)
生き物トピックス満杯の過ぎゆく秋の活動報告はまだまだ続きます。