【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
あらためて、新年明けましておめでとうございます。
本紙新春号「ナチュラリストからの年賀状」に続いてのご挨拶は、当・フィールド日記での活動報告が、郷土の自然環境と野生生物保護に役立つことを願って、今年も期待に応える朗報発信の公言で2021年のスタートです。まだまだロートルとは呼ばせないローカルナチュラリストの活動を、これからも温かく見守っていて下さい。
さて、依然コロナ禍の中、趣味を超えた生き甲斐の列車の旅とミュージアム巡りも足止めされ、兵庫県小野市で新年を迎えたコウノトリ・ひかりちゃんの再来を願ってのフィールド探査では、久しくの野鳥やお目当ての希少種との出会いもあって楽しいお正月を過ごしています。昨年のひかりちゃんフィーバーの最中にも、徳島生まれの藍ちゃん・和ちゃん姉妹の飛来が確認され、その他にもたくさんの目撃情報が寄せられ、全国で200羽を超えたコウノトリたちの今後の飛来にも大いに期待が持てるというものです。
かつて日本の空から姿を消したコウノトリが、再び「瑞祥の福鳥」の言葉と共によみがえった歴史的快挙は、絶滅の危機にある希少野生生物たちの保護に光明をもたらすものでした。同じく野生絶滅から復活したトキと共に、かつて絶滅宣言がなされたアホウドリやタンチョウも保護対策が実って安定個体数を保つまでになりました。
それでも、2012年には国の特別天然記念物に指定されていたニホンカワウソの絶滅が宣言され、同じく特別天然記念物のオオサンショウウオでは、DNA汚染と呼ばれるチュウゴクサンショウウオとの交雑が深刻な問題となっています。現在、外来生物による在来種への影響は計り知れず、天然記念物など希少野生生物の保護には、生息環境の保全と密猟など人為的被害対策などと共に、生態系を攪乱する外来生物の排除が不可欠となっています。
『シンク・グローバル、アクト・ローカル』を掲げるナチュラリスト、今年は経済的理由で棚上げしていた外来動物御三家の駆除に貢献すべく頑張る所存の年頭の決意です。これまでの馬車馬生活でのリアルタイム報告を持ち味としたフィールド通信に、話題のニュースや情報に関わる内容も取り入れたいと考えています。新年第一弾、希少生物・巷間四方山話にお付き合い下さい。

◎2021年初夢フォトエッセィ

先ずはお正月にふさわしい、その名も富士鷹なすびさんの野鳥絵はがき・1月のキジをご覧下さい。(写真①) ユーモアバードで知られる自慢の鳥友に、今回は「城陽環境パートナーシップ会議」のロゴマーク・カエルのイラストをお願いし、早速、実用的なエコバッグ(写真②)を作成して城陽市内の全小学校4・5年生の環境学習授業で配布されました。そんな限定お宝グッズを、2月14日に今年初めて開催されるPS会議の公式イベント「古川自然観察会」の参加申し込み者への進呈も検討されていますので期待しましょう。
これら富士鷹なすびさんのイラストと共に、城陽環境PS会議に約400種類もの野鳥写真を寄贈いただいた山中十郎さんの作品が今年も紙面を飾ります。現在、主要調査地としている巨椋池干拓田に隣接する宇治川河川敷の源内では、今や絶滅危惧種として見ることができなくなったコミミズク(写真③)の生息が確認され、同じく絶滅危惧種の希少猛禽類のチュウヒ(写真④)の出現を心待ちにしています。こうした調査報告に添えるお二人の写真とイラストが、見た目にも華やかで資料価値を高めてくれるものと感謝しています。
年始恒例のカレンダーの架け替えも、こだわりのある鉄道や生き物暦は捨てきれず、年々溜まる一方です。(写真⑤) 昨年は元旦の「ひかりちゃん初詣」の翌日から、飯田線のローカル列車の秘境駅の旅と、名古屋港水族館に上野動物園・国立科学博物館の定番コースに、王子動物園に手塚治虫記念館、四国の菊池寛記念館を巡って琴平電鉄の車窓の旅を満喫の正月でした。旧国鉄時代からの「宇高連絡船」終業の12月15日にも駆け付け、筋金入りの鉄道マニアも以後のコロナ禍の影響で寂しい一年を過ごしました。
そして今年の「野鳥初詣」は、昨年NHKの「さわやか自然百景」の取材が中止となったケリ(写真⑥)を初見鳥に、無事放映に至るように願掛けをしています。ケリの研究で学位をとった脇坂英弥君の元に、京大と岐阜大学の学生から調査・研究に不可欠な捕獲技術等の指導要請があり、筆者考案の匠の技の伝授で若き研究者の期待に応えます。鳥類標識調査員から初の狩猟者・ハンターになったナチュラリスト、本来の目的である外来生物駆除で貢献の年にしたいと考えています。ヌートリア(写真⑦)用には、カメ罠を改良して捕獲を行いますが、本来、何の罪もなくむしろ被害者たる彼らへの対処には心が痛みます。
今や有害駆除の対象となっているカワウでは、かつてはトキやコウノトリと同様に絶滅が危惧される希少鳥類として、山階鳥類研究所発行の「この鳥を守ろう=それが人の生命をまもる=」と題した書籍に載っています。(写真⑧) あれから40年の歳月を経て、一方は絶滅を逃れ繁栄の果てに石持て追われ、他方は絶滅から復活した瑞鳥として崇められる天地の開きは、生命の価値観さえ絶対的なものではないことを示す寂しい事例です。
今年の干支の丑・ウシ科に属する特別天然記念物のニホンカモシカ(写真⑨)は、保護活動を通じてかけがえのないナチュラリスト仲間たちとの出会いのきっかけとなった筆者にとって幸運の聖獣です。そんな彼らも幻の獣から復活するや、植林への被害を盾に天然記念物の指定解除の動きや駆除が始まり、銃による射殺映像が全国に放映された悲しい過去がありました。
あれから30数年、そんなニホンカモシカの朗報が丑年を目前にした年末に四国から飛び込んできました! 愛媛県では既に絶滅したものと思われていたニホンカモシカが再発見されたスクープ映像です。ナチュラリストの自慢のひとつに、京都府のレッドデータブックで絶滅種に記載のコガタノゲンゴロウを74年ぶりに再発見した功績があります。丑年の新年に向けて何よりのパワーをもらったナチュラリスト、フィールドの夢が拡がる2021年の幕開けです。

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