【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
新型コロナウィルス緊急事態宣言の発令から半月、まだまだ先が読めない不安な社会情勢にあって、日々の憂鬱なマスコミ報道のはざ間に流れた梅のつぼみのほころびを報じるニュースに安堵の想いが募りました。『冬は必ず春となる』との言葉を思い出し、二重苦・三重苦を強いられている受験生たちが、この極寒の時期を乗り切って、開花の春を迎えられることを切に願っている昨今です。
生来の楽天家で笑顔がトレードマークのナチュラリストも、コロナ禍の現状に心から弾けられない寂しい日々を送ってきましたが、久しぶりに歓喜の想いに浸り、長らくご無沙汰の仲間たちとも密で盛り上がりました。お待たせしました! 公言していたフィールドからの朗報発信・第一弾のお届けです。すでに本紙1月30日付紙面に速報記事が載りましたが、今年もコウノトリ・ひかりちゃんが飛来し、「瑞祥の福鳥再飛来!」の朗報が、コロナ禍終焉の序章となることを信じたいものです。
今回、あらためての詳細報告は、本物の笑顔が戻ったナチュラリストの鳥人日記です。絶滅から野生復活を果たしたコウノトリが、さらなる繁栄への第一ステップに、ふるさと城陽の地を候補のひとつに選んでくれたことは奇跡的な出来事です。餌の乏しい厳冬期に長期間滞在し、一過性の迷行記録ではないリターンと呼ばれる翌シーズンの再確認記録は、ツグミやカモ類と同じ冬鳥の仲間入りを果たし、やがて繁殖環境が整うことで定着にも夢が拡がる正に城陽市にとってひかりちゃんは「瑞祥の福鳥」そのものです。
全国的にみたら、200羽の内のたった1羽の取るに足らない記録と思われがちですが、その他大勢のコウノトリたちを差し置いて、「ひかりちゃん」の固有名詞で呼ばれる城陽市にとっても特別天然記念物の貴重な鳥の記録は、未来の主役のサクセスストーリーの脚本となるものです。といった、無粋なナチュラリストをも詩人にしてしまう?魅力的な鳥のフォトレポートをお届けします。
本紙スクープ速報に続いて、同日付でナチュラリストのフルタイム稼働の最新情報の記録を掲載していただけることは何よりの励みとなり、フィールド探査にも相乗効果が生まれます。リアルタイム、フィールド日記にお付き合い下さい。

◎ひかりちゃん、リターンの記録

1月29日14時30分、「城陽環境パートナーシップ会議」からコウノトリらしき鳥の目撃情報が市役所環境課事務局に寄せられたとの電話が入りました。早速、現地の文化パルク城陽東の水田地帯の現場に向かいながら、ナチュラリスト仲間たちに連絡をとり、まさかの間違いではないことを祈りました。
ほどなく、昨年もネグラにしていた電波塔の上に止まっているコウノトリを発見し、最初に駆けつけてくれた本城隆志・市議と共に標識足環の右脚の黄・青、左脚の黄・黒を確認し、昨年2月18日を最後に飛び去ったひかりちゃんリターンの実証を喜び合いました。ハイテンションコンビは、道行く人にも望遠鏡で観てもらって福鳥のお裾分けです。
城陽環境PS会議でコウノトリの絵はがきを作成したときの作品撮影者、田部富男さんに西尾長太郎さん、奥田睦和さんに田中義則さんも次々と駆けつけて確認いただきました。第一発見者で通報をいただいた呉松暁美さんや、城陽市の広報の方や寺田西小学校の校長先生も本城さんからの連絡で見に来られて、コウノトリ談義で盛り上がりました。
昨年、主要餌場となった杜若園芸さんの花卉栽培の田んぼが長期滞在の要因となったこともあり、岩見社長さんにご挨拶の電話を入れ、同社の岩田さんにも協力のお願いをしました。所用で現場を離れた後も、鳥類アドバイザーの岡井勇樹君がお父さんの岡井昭憲先生と共に駆け付けてくれて、やはり鳥類調査員の鳥垣咲子さんからもその後の追跡調査の詳細報告を受けています。こうして、初日の平日にもかかわらず、ナチュラリスト軍団が結集してひかりちゃんの密なる歓迎会で貴重な記録を共有する現認者となりました。
脇坂英弥君の情報ネットにより、前日までは兵庫県姫路市に居たことが解かっています。28日の夜から29日14時に城陽市で発見されるまでの間に長距離移動したことで、ひかりちゃんは間違いなく城陽市を目的地として一気に飛来したことが伺えます。昨年に比べて、餌場環境の変化と第2名神高速道路の建設工事の影響が心配ですが、とにもかくにもこの地を忘れずに戻ってきてくれたことに唯々感謝。大いなる元気をもらいました。
未来につながる奇跡の一歩が記された今年一番の朗報、ひかりちゃんのリターン記録がコロナ終焉の吉兆となることを信じています。本日、30日のお昼現在、ひかりちゃんはたくさんの人たちに見守られながら、ザリガニを食べてはしばしの休息を続けているとの報告が入っています。
昨日は筆者のカメラで撮った記録写真を速報記事に使っていただきましたが、今年もカメラマンの人たちの秀作を紹介できることでしょう。今一度、ひかりちゃんエピソードと写真をご覧ください
一昨年12月22日に鳥垣咲子さんによって発見され、西尾長太郎さんが撮影された標識足環から、2018年5月10日に福井県越前市の飼育施設で生まれ、同年9月17日に放鳥された個体番号J0205の愛称「ひかり」ちゃん・♀ということが判明しました。京都府で16番目の自治体記録となりましたが、一時的な滞在の迷行記録との思いに反して、花卉栽培の水田を餌場にザリガニやタニシを捕食し、近くの電波塔を休憩や夜のねぐらとする特異な環境下での越冬生態は特筆すべき記録となりました。
また、背中に装着されているGPS発信機の記録から、千葉県の鴨川市周辺で前シーズンを過ごし、城陽市には12月15日が初飛来と分かりました。2月8日の夜に城陽市を飛び立って翌日には和歌山市で記録され、そして再び2月の17日に餌場の田んぼに戻ってきました。そして、18日の早朝に京田辺市草内の池に移動し、採餌後の11時に上空高く舞い上がって三重県伊勢市の記録に引き継がれました。
その後すぐの2月22日に、徳島県鳴門市生まれの藍ちゃん・和ちゃん姉妹の飛来も確認され、他にもコウノトリ目撃情報が寄せられていました。ひかりちゃんはじめ、日本で野外個体が200羽を超え、これからもコウノトリ情報が期待される中、やはりひかりちゃんは特別な存在です。
2021年1月29日、ひかりちゃん物語の続編が始まりました!これからの展開にご注目いただき、絶口調のナチュラリストの矢継ぎ早活動報告におつきあい下さい。

◎写真解説
①②昨年もネグラにしていた文化パルク城陽南の電波塔で休息するコウノトリを確認。
③④本城隆志・市議(中)、奥田睦和さん共々、標識足環からひかりちゃんと確認する。
⑤第一発見者の呉松暁美さん(右)の通報が、貴重なリターン記録の実証に結び付いた。
⑥夜間のネグラ調査で確認できず不安だったが、夜が明けるとやはり去年の餌場にいた。
⑦7時になるのを待って関係者に電話連絡を入れ、見守りのお願い。自宅前が餌場の丸山令子さんも、ひかりちゃんとの再会が叶って笑顔のツーショット!
⑧見守りメンバーたちから嬉しい報告が相次ぐ。的場幸夫さんからザリガニ食の後のお昼休みは電柱で。

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