任期満了に伴う宇治田原町長選挙は31日に投開票され、現職の西谷信夫氏(禅定寺庄地・61歳)が3選を果たした。町幹部職員による談合収賄事件が影を落とす中、「刷新」を掲げた今西久美子氏(郷之口中林・59歳)と地縁・血縁も巻き込んだ激しい戦いを繰り広げたが、地元商工業界をはじめとする各種団体からの支援も受け、自民党主導の組織戦で押し切った。ただ、この「保守の町」にあって得票率は西谷氏56・4%、今西氏43・6%という僅差。高校生バス通学費問題など、具体的で身近な争点が影響したと思われる。事件に起因する濁流の中で、「声なき声」も含めた浮動票は大きく今西氏に流れた。
現職に新人が挑んだ町長選は、2001年以来20年ぶり。
西谷氏は1月8日に出馬表明し、後援組織「絆で創る宇治田原の会」とともに公約を発表。最重要項目1番目には、事件からの『信頼回復』を掲げた。
「管理監督する私自身の責任を痛感している。猛省の上に立って事件の原因究明と再発防止のため、第三者委員会を設置するとともに職員の綱紀保持、服務規律の遵守を徹底する」としたが、選挙戦で最もアピールしたのは、やはり『道路ネットワーク』だった。
「新名神高速道路の全線開通というインパクトを生かし、周辺道路の整備を官民一体で推進。生活の利便性向上や広域的な交流活発化により、地域の賑わい、活力を創出し、町の持続的な発展につなぐ」とし、「何が何でも山手線」と強調した。
一方、現職に対抗する組織『宇治田原町政を刷新する会』の共同代表として出馬した今西氏は▽疑惑一掃▽学校統廃合白紙▽高校生の通学バス代全額補助の復活などを訴えて支持を伸ばした。
この「一騎打ち」を政治決戦という観点で見ると、昨年12月の宇治市長選と似通っていた。
共産推薦の今西候補と自民・公明推薦・立憲民主と国民民主の議員も推す西谷候補との戦いは、「ダブルスコア」濃厚、すんなりいけば「トリプルスコア」の可能性もあるとみられていた。
今西陣営の基礎票は2016年11月の町議選…同氏と山本精氏の合計799票。西谷陣営は前回衆院選(17年10月)比例票の自民と公明を合わせた数字2225とするならば、スタート時点では大きな差があったはずだ。
だが、ここに事件が影を落とし、コロナ対応における菅政権への批判も高まるなど、西谷氏を逆風が襲う。当然「相乗り批判」もあり、蓋を開けてみれば、宇治市長選の得票比率6対4より僅差となる5対4のスコアでゲームセットとなった。
西谷氏自身「厳しい」と自覚していた選挙。3期目のスタートにあたっては、この数字を真摯に受け止めた上で、「未来への投資」に手腕を発揮してもらいたい。
なお、再選した西谷氏の3期目「初登庁式」は、9日(火)午前9時から、役場新庁舎の玄関前で行われる。