緑茶成分のウイルス抑制効果など議論/宇治でシンポジウム
パネリストによるディスカッション

宇治市宇治折居の宇治茶会館で15日、「緑茶と健康シンポジウム」が開かれた。複数機関の研究者が集まり、緑茶の持つ新型コロナウイルス感染予防効果について議論した。会場とオンライン合わせて約700人が参加した。
府が主催し、静岡県、鹿児島県および各地の茶業会議所が協力した。緑茶はインフルエンザ予防に効果が認められていることをふまえ、当該テーマを研究する静岡県立大学健康支援センター長の山田浩氏が基調講演を行った。
山田氏は講演の中で、カテキン(緑茶に含まれるアミノ酸の一つで、苦み成分)によるうがいがインフルの発症割合を下げるとの研究成果を披露しながら、新型コロナに関しても感染抑制につながる可能性を示唆した。
続くディスカッションでは、京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の三浦智行氏、仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一氏ら5人がパネラーとなり、各自の研究成果を交えながら緑茶の持つ新型コロナへの効果について話し合った。
このうち、府立医科大学教授の松田修氏は、茶(緑茶や紅茶)が新型コロナウイルスを迅速かつ効果的に不活化するとの研究を紹介。ヒトへの臨床は現在進行中で「試験管内の分析結果からすると、口からの(飛沫感染の)場合は十分予防できる可能性があると思う。鼻や気道からの感染では、たぶん無効だろう」と話した。
西村氏は、うがい薬のイソジンによるウイルス不活効果について述べながら、緑茶カテキンによる感染への影響を考察。一般的に流通しているお茶について、ボトルやティーバッグ商品に比べ、ある銘柄の粉末茶に顕著な抗ウイルス効果があったと発表した。
三浦氏は、新型コロナの疑似ウイルスによる中和試験の経過について述べた。カテキン類の抑制効果については論文を作成中だという。府茶業研究所技師の北尾悠樹氏は、カテキンのほか、リラックス効果をもたらすテアニンや老化予防に効くとされるポリアミンなど緑茶の栄養成分について説明した。
いずれの研究も、新型コロナ予防の点で、ヒトにおける臨床的効果は判明しておらず、今後の展開が待たれるところ。コーディネーターを務めた元府茶業研究所長の藤井孝夫氏は「ワクチンや薬に比べて卓越した効果は期待できないかもしれないが、日常的に緑茶を飲むことで免疫力を高め、感染防止に有効であると考える」と話した。