【第336号】コロナ禍で迎えた愛鳥月間トピックス①

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【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

コロナ騒動に翻弄されて迎えた新学期、ナチュラリストのライフワークとするフィールド調査と啓蒙活動のイベントも先行きが見えない事態に追い打ちをかける姻族の不幸が重なり、桜の開花を愛でる余裕もなく早5月の半ばを迎えています。
今年もコロナ禍の中、「城陽環境パートナーシップ会議」主催の2月の「古川自然観察会」が中止となり、愛鳥週間恒例の5月16日のバードウォッチングこそはと待ち望んでいました。再出発となるイベントを総合的な自然観察会にすべく、昆虫や植物など各分野の専門家を講師陣に迎えての楽しみな企画も緊急事態宣言のあおりで早々の中止勧告、ポジティブナチュラリストもほとほと凹みました。
前回の報告で、『次号に紙面を譲った大大ホットニュース!をお楽しみに。』と綴ってからひと月半、いっこうに届かない「フィールド日記」に、ナチュラリスト仲間や友人たちにはコロナ感染の心配までかけていました。3月の末に、城陽環境PS会議の盟友・山村元秀先生から知人が見つけられた生き物の問い合わせがあり、それが京都府の条例で希少野生生物に指定されている絶滅寸前種・ヤマトサンショウウオ(旧カスミサンショウウオ)の大発見でがぜんナチュラリストのヤル気スイッチが入りました。
城陽市・JR長池駅北の第二名神高速道路建設現場の隣接地で発見されたとのことで、喜々として追認調査に赴くも現場一帯は立ち入り禁止区域にはばまれ、すぐに京都府環境保全課に実情報告して調査協力を要請するも、管理地は管轄外で希少生物の調査申請の手続きも時間がかかるとあって、緊急を要するヤマトサンショウウオの本格調査は断念せざるを得ませんでした。はがゆい想いで周辺部を散策するも、成果を得られるはずもなくベストシーズンの終わりを迎えました。同じく京都府の希少野生生物のダルマガエルに次ぐ城陽市が誇るお宝生物の追認こそ叶いませんでしたが、生息を実証する貴重な写真をお借りしての公式記録の報告をお待ちください。
ライフワークとするフィールド調査と啓蒙活動のイベントが暗礁に乗り上げ、さらには余命宣告を受けた北海道で独り暮らしの義母の入院も重なって、近年にない焦燥感を覚えたコロナの春もようやく遠ざかりつつあります。ナチュラリストの活動の舞台もまだまだ整いませんが、これまでの馬車馬生活を見直し、のんびりと自然の中で生き物たちに向き合えとの「天の啓示」と受け止め、心穏やかにライフスタイル転換の薫風5月を過ごしています。
母の日の9日には、4月7日に鬼籍に入った義母・河原栄子の遺影にカーネーションを手向け、あらためて若き日の非礼を詫びて感謝の合掌で気持ちの上でも区切りとしています。没後8日目の4月15日には次男に長女が誕生し、忌明けの6月に義母の墓前に受け継がれた命の報告で義父の元への旅立ちを見送りたいと考えています。
コロナ禍の非日常でフィールド探査の課題さえままならないナチュラリストも、調査仲間たちから届く朗報に元気づけられてきました。愛鳥週間も始まり、久しくの活動報告は遅ればせながらの野鳥たちの話題から、雑多なトピックスをお届けします。

◎野鳥フォトレポート

愛鳥月間の5月に入り、今年も「城陽環境パートナーシップ会議」に幾多の野鳥イラストを提供いただいているナチュラリスト自慢の鳥友・富士鷹なすびさんの啓発ポスターが目に止まるようになりました。(写真①)
これは、巣立ったばかりのヒナ鳥を見つけてもそのままにとのキャッチコピーで、環境省と保護団体で作成された野生の営みに人間が関与することへの忠告です。それでも、車や外敵の危険が及ぶと判断した時は臨機応変に緊急避難的措置での対処が求められています。記憶に新しいところでは、スズメといえども野鳥の飼育は法律で禁じられており、仔スズメを保護して育てた芸能人が書類送検された「善意の不幸」が思い出されます。
そんな折、ナチュラリスト仲間の西森誉普さん(写真②右)より庭の陶器の中でシジュウカラが営巣しているとの報告を受け、9個の卵が無事に孵化し、元気に育っている姿を本紙でも紹介いただきました。(写真③④⑤) そしてこの度、大きく育ったシジュウカラの雛鳥の映像が届き、本来は爬虫類と甲虫が専門の西森さんもにわか愛鳥家となって、庭に餌台を設置して巣立ちの日を心待ちにされています。(写真⑥⑦)
同じく本紙で報道いただいた野鳥情報のひとつ、巨椋池干拓田に飛来したコシャクシギ(写真⑧)は、過去30年間でも3回の記録しかなかった大珍鳥で、天然記念物のイヌワシやライチョウと同じく「絶滅危惧ⅠB」に指定されている希少種です。特筆すべきは、これまで渡りのコースから外れた迷鳥として単独で観察されていましたが、今回は6羽もの小群での飛来が確認されたことです。傘寿を迎えたベテラン野鳥カメラマンの山中十郎さん(写真⑨左)も、この時ばかりは京都市内から自転車を飛ばして駆け付け、公式記録となる当コシャクシギの写真の提供を受けています。
2月にはやはり過去30年間で2~3回しか記録のないオオハシシギが城陽市の古川で観察されており、5月12日付本紙でもまたまた30余年ぶりに西尾長太郎さんが京田辺市で発見された絶滅危惧種・ソリハシシギの記事が掲載され、他にもシラコバトなどまれに見る野鳥の当たり年・朗報ラッシュが続いています。また、京都府の希少野生生物に指定の絶滅危惧種・タマシギの産卵と思われる貴重な動画を撮影され、資料映像の提供を受けた浅野正美さん・みゆきさん夫妻から、かつての野鳥の宝庫・巨椋池干拓田から消えて久しい希少旅鳥の絶滅危惧種・ツバメチドリ(写真⑩)の飛来を実証する写真も届いています。
この他、一般の方々からもツバメにキジバトの雛鳥の保護やカラス被害対策の相談に、事故に遭ったキジにケリの巣に残された卵の保護の要請や、木津川漁協役員としてカワウによる深刻な漁業被害の対策など、まだまだ鳥人ナチュラリストの看板を外せない鳥三昧の愛鳥月間を過ごしています。猛威を奮うコロナ禍の憂鬱もしばし忘れさせてくれる鳥たちのちょっといい話、ナチュラリストの復活報告はまだまだ続きます。

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