翔けるベンチャー!NASAへアピール/宇治・メトロウェザー
組み上がったドップラー・ライダーに注目するメイ米国総領事ら

自慢の最先端テクノロジーをNASA(米国航空宇宙局)に働き掛けて正式採用を目指す宇治のベンチャー企業・メトロウェザー㈱(古本淳一代表取締役)に29日、在大阪‐神戸アメリカ総領事館のリチャード・メイ総領事が訪れ、開発現場の息吹を感じ取った。これまで点でしか捉えられなかった大気中の風の動きを、およそ半径15㌔に及ぶ面で捉えることができる技術と機器の開発、さらなる発展に国内外から期待と関心が寄せられる。

会社を立ち上げたメンバーの古本代表取締役(中央)

メトロウェザー㈱は、京都大学宇治キャンパス生存圏研究所で活動を進めた古本淳一さんと東邦昭さんの研究者2人が中心となり立ち上げた会社。
信楽町にあるMUレーダーも使って大気の観測を進める中、気象観測装置の開発を始めた。
資金調達と運営を着実に進めながら、宇治市が設置するベンチャー企業育成工場=大久保町西ノ端=へ19年に入居(6号棟)。
「ドップラー・ライダー」と呼ばれる高性能の小型風況観測機器の開発と製造、データ配信を主とする事業もぐんぐんと追い風に乗り、初号機が完成した昨年にはNTTコミュニケーションズ㈱と「風況の実況・予測状況を提供する」業務提携を結んだ。
これまで地表近くに限られた風に関する情報を、長年の研究で培ったリモート・センシングと信号処理技術を用い、上空や海上での風の情報を高精度に測定する機器に集約した。

軽トラ車上の初号機とプリウス車載型機器は上部からレーザーを放つ

同社は「従来は風見鶏、モニタリング、アナログ。ピンポイントでしか測れなかった。赤外線を大気に放ち、わずかに反射して返ってくる塵(ちり)の速度を知ることで風の速度が分かる。多数のポイントでの計測も可能。半径15㌔の面でデータが取れる」と強みをひも解く。
初号機は約1㍍四方で重量350キロ。望遠鏡も備え、何といってもケースがどっしり重いという。車載型も実践段階に入った。
国内外の他社製はより大型で価格も高いため、「もっとコンパクトに。さらに小型化を進め、ドローンや空飛ぶ車の近未来社会に向けて導入しやすくしたい」と意気込む。60㌢四方で約130㌔サイズも生み出し、35㌢四方で100キロを切るものにも挑んでいる。
他社製に比べ、「ひとケタ少ない価格で提供できる」と展望する。

■近い将来見据え
この日は、メイ総領事をはじめ米国総領事館幹部のほか、山下晃正副知事、日本貿易振興機構(JETRO)京都貿易情報センターの牧野直史所長、京都産業21の岡本圭司専務理事、宇治市の松村淳子市長らが顔を揃え、同社の古本淳一代表取締役、東邦昭取締役らと懇談した。
工房に足を運んだメイ総領事は技術部役員の説明に耳を澄ませ、機器に目を凝らした。
将来を見据え、航空の安全を下支えするテクノロジー。
サイズがコンパクトになればなるほど、設置とメンテナンスは容易となり、なるべく障害物がないビルの屋上や鉄塔上方にも据えることができる。
同社は京大宇治川ラボの屋上に機器を設置して気象観測を始めたほか、採用企業などでも既に稼働している。
赤外線レーザーを照射する部分が回転し、「好きなところに光を射ることができる」のが特長だ。
米企業と手を取り合い、NASA航空部門の研究において空の安全運航に貢献する技術の「正式採用へ」今後もアピールしていく。
懇談では、市がベンチャー育成のための施設の説明や案内なども行った。