宇治茶道具 国の有形文化財に/文化庁
国の有形民俗文化財に登録される宇治茶生産道具の一部(宇治市歴史資料館提供)

文化庁の文化審議会は21日、文部科学大臣から諮問があった国の登録有形民俗文化財の登録について答申した。本紙関係では、宇治市が所有する「宇治茶の生産・販売用具」が含まれる。宇治市からの同文化財登録は初めてで、近く正式に登録される。
今回の登録には、宇治茶道具と石川県七尾市の嫁暖簾が選ばれた。この2件を合わせて総数は48となる。茶関係の道具が登録されるのは、2007年の狭山茶(埼玉県)生産道具以来。
同市歴史資料館では、1984年の開館以来、宇治茶関係資料の収集に努めてきており、今回の対象は江戸時代の終わりから昭和40年代まで使われてきた生産・販売用の道具で、合わせて397点。
なかでも、茶園に覆いを組む時や取り外す時に使う「覆取鎌(おいとりがま)」や、新芽をより分けるための「撰り板」などは、宇治茶独特の覆下栽培法において用いられたもので、狭山茶のものにはみられないという。
同資料館では、これまで3回にわたって宇治茶道具に関する特別展を開催。2017年に収蔵資料調査報告書「宇治茶の民具」を発刊した後、翌年に京都府の暫定登録文化財に登録された経緯がある。
家塚智子館長は「光栄なことだと思います。ここ宇治で、茶業に関わる人たちが大切に使ってきたものです。近代化・機械化が進んでいる今、道具を守るだけではなく、先人たちが大切にしてきた思いを守り、伝えていくことが大切だと思います」と話した。
松村淳子市長は「資料を大切に保管され、本紙へご寄贈いただきました皆様方のご協力に心から感謝いたしますとともに、今後もその価値を後世に継承できるよう、市民の皆様と共に最大限の努力を重ねて参ります」とコメントを寄せた。
なお、同館の常設展で展示している道具類は全体のうち約40点のみ。収蔵資料調査報告書「宇治茶の民具」は宇治市のホームページから見られる。