【第347号】猛ダッシュ! ライフワーク充実の年明け

B!

【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
コウノトリ飛来!の朗報に期待しながら、暮れから年明けの慌ただしい中も、コロナ鬱やアクシデントの暗雲を払うべくフィールド探査に奔走し、宇治川に飛来した大珍鳥・コウライアイサとの出逢いで幸先の良い一年のスタートを切ることができました。
その前後も、兵庫県たつの市で発見された謎の鳥の確認に駆け付け、この日の為に借りたカメラで無事写真に収めることもできました。また地元でも、木津川河川敷でケアシノスリの目撃情報が入り、京田辺市では昨年に続いてシラコバトの飛来を実証する写真が撮られていたことも判明し、オジロトウネンの越冬やクイナなど希少鳥類の情報ラッシュでがぜん鳥スイッチ・オンのハイテンションモードは、2年間のおあずけをくらっていた列車の旅とミュージアム巡りの趣味にも飛び火しました。
かくして、ローカル列車の車両独り占めを満喫し、路面電車で豊橋市美術博物館や山陽電鉄での須磨海浜水族園へ赴き、思いっきり羽を伸ばしてきました。そして、毎年訪れるお気に入りの「のんほいパーク」には、野鳥調査の相棒たちを誘って片道4時間半の鈍行列車に揺られて自然史博物館と動植物園を楽しみました。
コロナ禍で企画倒れとなっていた万能巣箱の設置にも乗り出し、2009年に城陽市で繁殖が確認された希少猛禽類・チョウゲンボウでも人工巣箱での保護増殖プロジェクトが始まりました。1月8日には最適な条件下にある施設の関係者の協力を得、屋上に設置することができました。全国初の試みが成功し、ふるさとのお宝生物に環境省の刻印もおしゃれな指輪ならぬ標識足環をプレゼントできる日が来ることを願っています。
この45年間、欠かさず記してきた山と渓谷社の高山植物のフラワーカレンダーの日誌でも、1月は近年にないほどびっしりと活動記録で埋められています。再び緊急事態宣言が懸念される中、ナチュラリストの本分が活かせる一年であることを祈念し、胸を張れる成果を残せるよう頑張る所存です。
今年の第三弾も、野鳥ホットニュースをメインに、コウノトリが出会いを演出してくれた鳥仲間たちとの活動日記をお届けします。笑顔全開のフォトレポートをご覧下さい。

◎フォト日記

近鉄電車のすぐ脇の水田を餌場にしていたコウノトリ・ひかりちゃん。(写真➀) 城陽中学校の校歌にも謳われた鴻ノ巣山ゆかりの瑞祥の福鳥が、未来につなぐ夢を乗せてこれからも城陽の地に飛来してくれることを願うばかりです。
筆者にとって福島の一番のご利益は、こうした記録写真の提供者・田中義則さん(写真②左)と、昨シーズンに真っ先に城陽環境PS会議の事務局にコウノトリ飛来の報告をいただいた呉松暁美さん(同右)たち愛鳥家の人たちとの出会いでした。今ではフィールド仲間として、コウライアイサの観察やシラコバト探査にも同行し、昨年には城陽市のお宝生物・アズキガイ調査の現認などナチュラリストの活動のサポートをいただいています。
この日は、1月8日に福祉施設・ひだまり久世の屋上に設置したチョウゲンボウの人工巣箱の様子見で、鳥と人に配慮してこれだけ遠くから観察しています。昨年、田中さんによってチョウゲンボウの交尾シーンが撮影され、今後の繁殖生態に添える貴重な記録写真が得られました。(写真③) 石田実理事長(写真④中)と施設長の理解と協力に感謝し、全国初の取り組みが陽の目をみることを願っています。犬小屋を利用したチョウゲンボウの人工巣箱プロジェクトは、当洛タイ新報「里山通信20」で脇坂英弥君(同左)が詳細報告していますのでそちらをご覧下さい。
その鳥類学者の脇坂先生に指導を受け、日の出前から鳥類標識調査の研修に従事する福井惇一君(写真⑤右)もまた、コウノトリが縁の将来が楽しみなジュニアメンバーです。昨年来、新潟県からの飛来など移動経路が分かるリカバリー記録に、標識した野鳥が翌シーズンにも再び確認されるリターン記録、アリスイなどめったに見られない珍鳥の標識放鳥にも立ち会えた福井君の運の強さは、フィールドでの観察にも新たな野鳥の生息や知られざる生態の発見にも現れています。
昨年には京都府で初めてのコウゲンモズの繁殖や、これまで記録がないチョウゲンボウが二度目の繁殖に成功など、確かな観察力と何よりの熱心さには頭がさがります。そして、アルバイトで訪れた兵庫県でも、自身で識別できない変わった野鳥を見つけたとの連絡が入り、暮れも押し迫った12月30日にたつの市の海辺の現地に駆け付け、みぞれ混じりの寒風の中、何とか謎の鳥を確認することができました。(写真⑥)
福井君の指摘通り、イソヒヨドリよりひと回り小さく、尾も短く若鳥やメスとは明らかに異なる羽色より、南方系の亜種・アオハライソヒヨドリの可能性があると思われますが、
写真では判別も微妙であり、識別には定評のある岡井勇樹君と脇坂英也君の判断を仰いで、結果次第ではあらためて現地に確認に赴きたいと考えています。続報にご期待下さい。
コロナが収まれば今年こそ所属学会での研究発表を考えていますが、功労者の福井惇一君も共同発表者に名前を連ねて高校生にして鳥学会デビューを果たす予定です。その研究題材のひとつのシラコバトの観察記録では、今年も同一フィールドに飛来が確認されていたことが聴取調査より判明し、発見者の小巻憲司さんから貴重な記録写真(写真⑦)の提供を受けています。全国でも例を見ない2シーズン連続の越冬飛来の追認調査に奔走し、これらの結果はあらためての福井君からの詳細報告を待ちましょう。
放課後はもちろん、登校前の早朝やお昼休みまで抜け出してシラコバト探査に高じる福井君に、遅ればせながらのお年玉は、カワセミやトラツグミからクマタカなどの野鳥が見られる動物園に、恐竜から郷土の生き物全般の展示に定評のある自然史博物館がある愛知県豊橋市の「のんほいパーク」へ田中義則さん共々ご招待です。(写真⑧) 豊橋市は鉄道マニアの筆者にとってはゆかりの地で、南アルプスを望む長野県辰野駅までの秘境駅路線・飯田線には、年に2~3回は乗りにきていました。1週間前の1月4日にも、豊橋鉄道と路面電車(写真⑨)を目的に、郷土グルメ満喫の鉄道ひとり旅を楽しんでいます。
多摩動物公園から贈られたばかりのコウノトリを覗き見て、ふくろうの森の住人たちを被写体に楽しんでもらいました。(写真⑩) 博物館自慢の3D大画面の科学ムービーを堪能し、フィールド調査に役立つ展示資料に学ぶ福井君に、筆者が発見した爬虫類の間違い表記にロックオンしての記念撮影です。(写真⑪) 年齢差60歳の相棒たちと、ナチュラリストのライフスタイルを押付けた休日の一日フル稼働で、明日のフィールド活動への精気を充填してきました。
やっと日常が戻りつつあるナチュラリストの2022年厳冬期、一日も早いオミクロン株の鎮静化で、共に明るい春を迎えられることを願っています。自然観察会と講演会に鳥類標識調査研修会と続く2月も、元気で朗報発信できますように…。

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