平等院(神居文彰住職)の鳳凰堂内に使われている鉄製部材から、金と水銀が検出されたことが分かった。調査した早川泰弘・東京文化財研究所副所長は、「アマルガム鍍金と判断できる。ただ、メカニズムは分からない。どのようなかたちで鉄に金が乗せられるのか、検証が必要」と話している。
これまで、鉄が腐食するため、鉄に金を鍍金することはできないというのが定説だった。今回の発見は定説を覆す可能性を持つもので、早川さんによる論文が『鳳翔学叢・第18輯』(平等院発行)に掲載されて以降、大きな反響を呼んでいるという。
鳳凰堂内では一昨年から、彩色の修理が行われていた。組まれた足場に乗って調査をしていた神居住職が、天井近くの組み木にあるカギ状の鉄製部材(長さ7・9㌢、高さ4・1㌢)に金色の付着物を見つけた。
早川さんが蛍光X線分析をしたところ、堂内の丸柱10本にある同様の鉄製部材8本から、金と水銀が検出された。水銀は鍍金に必要な物質。
また早川さんは、「鳳凰堂のような極彩色の荘厳空間の中で、鉄製部材が素材露出のまま使われているとは考えにくい」との見解を示した。実際、表面装飾に由来すると考えられる鉛が検出された鉄製部材もあった。
これまではありえないとされてきた鉄に金の鍍金だが、早川さんは「表面を平滑にするなど、何らかの処置が行われたと推測される」と話した。今後、関係各所での検証が期待される。