「京都を学ぶ・宇治編」発刊/地元の研究者らが執筆

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地元宇治の歴史文化に触れる学術書「京都を学ぶ・宇治編」(ナカニシヤ出版)がこのほど発刊された。まだ知られていない京都の宝である「文化資源」に光を当てるシリーズ。宇治の歴史に詳しい研究者ら12人が執筆し、読みごたえのある一冊となっている。
このシリーズは、京都府立京都学・歴彩館(金田章裕館長)と、府内の研究機関が連携して進める共同研究プロジェクトの一環で、2015年度の「洛北編」を皮切りに研究報告を取りまとめ、一般書としても発行してきた。
4章からなる本書の冒頭では、金田館長が「八世紀の宇治」として平安遷都の時期における宇治郡・久世郡を概観。続日本紀に記された聖武天皇行幸のルートを推測しつつ、山背国随一の要衝であった宇治の意義を再確認した。
京都芸術大学教授の杉本宏さんは「平安時代の宇治と藤原氏別業」をまとめ、平等院が表現する極楽浄土の景観を論じた。宇治市歴史資料館館長の家塚智子さんは源氏物語や歌枕にみられる宇治の光景と、宇治橋の守り神とされる「橋姫」の変化を綴った。
第2章の「中・近世の宇治と巨椋神社」では、宇治や宇治田原と戦乱との関わりについて触れた論考がある。宇治に欠かせない「宇治茶」を掘り下げた第3章では、茶業や町家の変遷がテーマとなっている。
最終章は「宇治茶の諸相と宇治の民族行事」で、元府茶業研究所長の藤井孝夫さんと、京都文教大学教授の森正美さんが担当。藤井さんは、茶そのものに加えて肥料や土壌の化学成分にも注目した研究成果を発表。森さんは、コロナ禍での県祭・大幣神事を含め、中宇治の地域民族行事について記述した。
A5版242ページ。本体価格2200円。

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