創建時の大屋根は「本瓦葺き」/平等院鳳凰堂
鳳凰堂創建当初イメージ図(金沢美術工芸大学准教授・荒木恵信氏制作、平等院提供)

世界遺産の平等院(1053年建立)で、創建時のすがたに関する新発見についての報告が31日、あった。研究をもとに描いた復元図では、鳳凰堂の中堂の大屋根は本瓦葺きで、下の裳階(もこし)屋根が木瓦(こがわら)葺きの二段構造になっており、上下で異なる色づかいが確認できる。
これまで出土した瓦の総量などからみて、鳳凰堂の屋根は基本的に木瓦葺き(板葺きのこと)であり、棟甍(むねいらか)の形で棟部分だけに瓦を載せたとの説が有力視されていたが、今回の新発見はこの通説を覆すものとなる。

記者会見で復原図を示した芦田氏

記者会見で、平成の修理に携わって以来30年の調査を続けてきた芦田淳一氏は、所在不明になっている物を含めた古瓦を丹念に調べ上げ、勾配や規格寸法を考慮して作成した復原図を紹介。結論として、創建当初の中堂の大屋根は、木瓦ではなく本瓦葺きだった可能性を指摘した。
一方、平等院の維持管理担当技術者の鳴海祥博氏は、板葺きの屋根材と思われる古材の実物を鳳凰堂の小屋裏で目にしたといい「創建時の屋根形態には、木瓦葺きと本瓦葺きの双方が存在した可能性がある」とコメント。芦田氏の研究成果を踏まえ、南北に伸びる翼廊の屋根も木瓦葺きであり、楼閣部分が本瓦葺きだと推定した。
神居文彰住職は「上は趣ある豪壮な瓦で、下は板葺きになっている。現代風にいえば、それらを調和させたハイブリッドな建物だと思う」と話し、両氏の研究成果に対して感謝を述べた。
復元図および関係資料は、平等院ミュージアム鳳翔館・扉絵の間できょう1日から掲示する。なお、芦田氏・鳴海氏の論考は、紀要「鳳翔学叢・第19輯」(鳳凰堂建立970年記念号、平等院刊)に詳しく記されている。同館ショップコーナーで入手可。税込1000円。