城陽市教委は13日、山城地方最大級の前方後円墳・久津川車塚古墳=国史跡指定・古墳時代中期(5世紀前半)築造・同市平川=の今年度発掘調査成果の中で「西側くびれ部にある造り出し(儀礼場)を反転した位置(東側くびれ部)を調査したところ、造り出しは確認できなかった」と発表した。西日本の同年代築造・同規模の前方後円墳では、岡山県総社市の「作山(さくざん)古墳」などが片側のみの造り出し形状という。考古学が専門の大阪公立大学・岸本直文教授は「儀礼は、見せることが大切なので、人々が生活を営む木津川流域から見える西側のみに設置されたのではないか」と話した。
久津川車塚古墳の史跡公園整備に向けた市教委の発掘調査は、2014年度から始まり、今年度で節目の10年目。市史跡整備委員会委員の岸本教授と同じく考古学が専門の長友朋子教授(立命館大学)の指導のもと、学生有志らの協力を得て8月17日に開始し、昨年度に続き、JR奈良線東側で4カ所トレンチ(発掘)した。調査期間は10月6日まで。
今回の発掘箇所は、後円部東側の2カ所、くびれ部東側2カ所の計4カ所・約270平方㍍。
まず、後円部東側のトレンチでは、古墳の「中段斜面の裾」、「下段テラス(平坦部)」、「下段斜面」を確認。具体的な成果としては▼中段斜面の裾で30㌢大の石材を使った石列(基底石)を検出▼幅5・2㍍の下段テラスからは礫敷と埴輪列が見つかった▼中段斜面の裾の石列から東3・8㍍の位置で円筒埴輪列も検出したが、5本のうち1本は抜き取られていた…とまとめた。
別の後円部東側トレンチからも、円筒埴輪列6本が出土。そのうち、1本は直径34㌢と他のものより大きく、出土した破片からも朝顔型埴輪である可能性があるという。また、葺石の中には、古墳構築時に工区を区画したとみられる縦方向の「区画石列」があることも確認。区画石列は、横長形状の石材が使用されていた。
一方、くびれ部東側2カ所のトレンチは「造り出し(儀礼場)」の確認を目的として行ったが、西側くびれ部にある造り出しを、反転した位置からは検出できなかった。
これについて岸本・長友両教授は「5世紀前半の古墳は比較的、片側の造り出し形状が多い。中期になると両側に造り出しを設けられるケースが増え、片側形状と半々ぐらいになる」と、これまでの調査結果を踏まえて傾向を解説した。
久津川車塚古墳と同時期築造、同規模の前方後円墳では、岡山県総社市の「作山古墳」、奈良市の「ウワナベ古墳」「ヒシアゲ古墳」、大阪府藤井寺市の「岡ミサンザイ古墳」、大阪府岬町の「西陵古墳」が片側のみに造り出しがある形状…と確認されている。
市教委は、今回の調査で久津川車塚古墳の東側くびれ部に造り出しが検出されなかったことに関し「古墳の詳細な形態・構造を復元し、将来の史跡整備を進める上で、貴重な成果」と受け止めている。
なお、市教委の発掘調査は、2026年度まで続けられ、その後に史跡公園づくりが進められる。