角野栄子さん「イコ トラベリング 1948-」受賞/宇治市・第33回紫式部文学賞

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宇治市は5日、第33回紫式部文学賞の受賞作品に、作家・角野栄子さん(88)の『イコ トラベリング 1948ー』(角川書店、2022年)を選んだ、と発表した。贈呈式は、同日発表された紫式部市民文化賞と合わせて、11月18日(土)に宇治市文化センター大ホールで行う予定。
角野さんは1935年東京都生まれ。神奈川県鎌倉市在住。出版社勤務を経て24歳の時、ブラジルに2年間滞在した。35歳で作家デビューし、代表作『魔女の宅急便』は89年にスタジオジブリ作品として映画化された。2016年『トンネルの森 1945』で産経児童出版文化賞ニッポン放送賞。ほか受賞多数。

受賞作『イコ トラベリング 1948ー』表紙

今回の受賞作は、著者の角野さんによる自叙伝的物語。女学校に通う13歳の「イコ」が、英語の授業をきっかけに海の向こうのアメリカに思いをはせる。連合国の占領下、自由に目覚めていく少女時代を、軽快かつ奔放に描いた作品。
源氏物語ミュージアムで開かれた記者発表で、選考委員会の鈴木貞美委員長(国際日本文化研究センター名誉教授)が「小さな冒険の連続が、嫌みなく書かれている。世相に閉塞感があっても、突き破っていける…そんなメッセージが込められているように思う」と評価した。
角野さんは、受賞に当たり「歴代の受賞者を拝見すると、私は飛びぬけて高齢です。また紫式部のようなラブストーリーも書いておりません。多くは子供たちのための本ですが、物語を楽しんだ子供たちが、大人への橋を渡ってからも、読書を喜びとしてほしい」とコメントを寄せた。
紫式部文学賞は、宇治市が「源氏物語」宇治十帖の主要舞台であることから、市民文化の向上や女性文学の発展を目指して1991年に創設された。受賞者にはクリスタル像と副賞100万円が贈られる。
今回は、昨年1年間に発表された小説38点、随筆8点、評論など4点、詩集など13点、ノンフィクション2点、翻訳その他4点の合計69点(前回58点)から選考した。

■「市民文化賞」は5人栄誉
宇治市は5日、第33回「紫式部市民文化賞」の選考結果を発表した。受賞作品は、片桐望さん(78)の随筆『宇治でのよしなしごと』と、岡田一敏さん(74)の研究『クイズで紡ぐ宇治の今昔400問』に決まった。奨励賞には、童話グループ「風のクレヨン」の同人誌と、わいわいTRY塾による講演集が輝いた。ユース賞(30歳以下)には稲田知恵さん(27)のSF小説『乙女の憂鬱』が選ばれた。受賞者は前回の3人から5人に増えた。

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