新酒の仕込み、本格化/城陽酒造
大型タンク内でもろみを撹拌する「櫂(かい)入れ」を行う蔵人ら

1895(明治28)年創業、南山城地域唯一の造り酒屋・城陽酒造㈱(島本稔大代表取締役)=城陽市奈島=で、今シーズン新酒の仕込み作業が本格化している。昨季から出荷時期を例年より約1カ月早め、飲食店をはじめとする需要増に対応。ただ、コロナ時に減産した酒米の収穫量が回復しておらず、良質な米の確保も仕込みを早めた要因という。府内産の酒米にできる限りこだわり『濃潤旨口』を貫く同社の新酒が店頭に並ぶのを待ちわびる愛飲家は多い。
城陽酒造の地酒づくりは、蔵内の井戸から汲み上げる地下水と府内産の酒米を主原料に、丹精込めて仕上げる製法が120年以上にわたって続けられている。
新酒の先陣を切る生原酒「たれくち酒」、原酒「にごり酒」は、酒造好適米100%。近年、需要が高まる高級志向の「純米吟醸」は、すべて府北部の丹後・丹波地域で獲れた酒米「五百万石」を使用する。
今夏は猛暑続きで、酒米の栽培も難しい年となり、コロナ時の減産の影響で、良質な酒米の確保が難しさがクローズアップされる中、同社は府内産の「祝」、兵庫県産「山田錦」「愛山(あいやま)」、岡山県産「雄町(おまち)」など良質な米を確保。今後、順次仕込みを行う。
今シーズンの酒造りに使われる酒米は、約68㌧(玄米ベース・前年並み)。清酒全体では、一升ビン(1・8㍑)換算で5万5000本。前年比1万6000本増を見込んでいる。
これでコロナ前まで、新酒の仕込み量は回復。忘年会・新年会など宴会が戻ることに期待し、蔵人らは「業務用の清酒の出荷は伸びる」と確信し、酒造りを続けている。
今季は、10月1日に『蔵入り』、同10日から酒米を洗い始め、酒造りを開始した。
長年、杜氏を務めてきた古川與志次さんから引き継ぎ、加藤久典さん(47)ら6人の若い精鋭たちが、毎朝4時から酒米を蒸したり、タンク内のもろみを撹拌し、温度を一定に保つ朝夕の櫂(かい)入れをしたり…と大忙し。特に、仕込み時期を早めた分、タンク内の温度を冷やす工程に神経を使っているようだ。
酒造りは、来年3月中旬まで続けられ、杜氏や蔵人らは年末や正月休み返上で酒造りを追求。島本社長は「来年こそ蔵開き祭を行いたい」と意欲を示す。
11月10日ごろからは、いよいよ地元の主要酒店に城陽酒造の新酒が並ぶ。価格は、生原酒「たれくち酒」2750円、原酒「にごり酒」2530円=いずれも1・8㍑入り・税込み=。720㍉㍑入りはその半額程度で販売される。原材料高や光熱費の高騰が続く中、苦渋の判断として昨年より、やや値段はアップする。
ぜひ、出来たて・搾りたての新酒を、そのまま瓶詰めした雑味のない味わいを家族で楽しみ、年末にはお歳暮として、お世話になった人々に贈るのも良いかもしれない。
なお、新酒の酒粕販売も11月10日ごろから直売店で始まる予定。売り切れ必至だけに早めにお買い求めを。問い合わせは同社℡0774‐52‐0003まで。