【第361号】2023年を振り返って…爬虫類談義

B!

【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
今年もカウントダウンを迎え、WBCに始まるベースボールイヤーの感動が、2020年初頭から猛威を振るったコロナ禍の憂鬱も吹っ飛ばし、来年度は活動停滞から完全復活の飛躍の年となることを願っている年の瀬です。ナチュラリストが年間最大行事と位置付け、研究発表を続けてきた学術会議への参加も途絶えていましたが、令和を迎えて6年目にしてフィールド成果を携えての参加宣言です。
今年になって、京大と東京都立大学から宇治田原町の鳥類目録に関しての問い合わせがあり、長らくの活動停滞で改訂されていない2017年度までの資料提供と、近年確認されたコウノトリやヤツガシラなど、新たに確認された追加種の情報を口頭でお伝えしました。1983年度より取り組んできた鳥類目録は、1999年度の日本鳥学会大会で南山城地方5市10町1村(当時)と木津川河川敷など3フィールドの野鳥たちの生息状況をまとめたもので、以後順次改訂を続けてきました。また、京都府のレッドデータブックの完成や改訂版の刊行に際して、「鳥類目録・希少鳥類編」や外来種を含む「野生生物生息リスト」を作成し、所属学会や環境イベントでも公表してきました。
そんなナチュラリストの代名詞たる郷土の環境資料も、活動母体の城陽環境パートナーシップ会議作成の「城陽生き物ハンドブック2010」から2014年の改訂版に受け継がれ、翌年には動画を追加したDVD版を発表し、2018年度からは分野ごとのガイドブック編集とし、「希少生物編」から今年度の「さかな編」までシリーズ第5弾を数え、来年度には「外来生物編」の作成が決まっています。
もはやフィールド探査でのあらたな発見の可能性は低いでしょうが、地元の「城陽市環境フォーラム」とコロナ中断から復活開催の「京都環境フェスティバル」に、数年ぶりとなる日本鳥学会と日本爬虫両棲類学会でも研究成果の発表ができるよう希少種と外来生物の最新情報を中心に、またリアルタイムでお届けすべく頑張る所存です。
フィールドリタイア状態だったロートルナチュラリストもようやくコロナ禍の呪縛から解き放たれ、今年のガイドブック・さかな編の完成で、以後の関連イベントで運気も好転し、宇治市ではゆかりの珍蛇・タカチホヘビが見つかり、宇治田原町で目撃されたオオサンショウウオの極秘調査依頼にテンションもマックスでロートル返上のフィールド復帰です。そんな今年の活動再開と爬虫類トピックスで綴るフォトレポートにお付き合い下さい。

◎2023年を振り返る活動日記と爬虫類トピックス

11月25日に城陽文化パルク城陽で開催された「第22回城陽市環境フォーラム」のメインとなる講演会には、日本爬虫両棲類学会前会長の疋田努・京大名誉教授をお招きし、「爬虫類の分布と気候変動」をテーマにお話しいただきました。(写真①②) 主催の城陽環境パートナーシップ会議とは、生き物ハンドブック製作の折に爬虫類の監修をいただいたアドバイザーで、筆者が城陽市で珍蛇・シロマダラを発見したのを機に指導を仰いでいます。今回、トビトカゲやアシナシトカゲなど、めったに見られない標本を持参され、大野会長・芦原副会長共々記念撮影です。(写真③) そしてアフターの懇親会では、疋田先生を囲んでトカゲ酒で盛り上がりました。(写真④)
今年の6月28日、宇治市の平等院近くにお住いの永野かずこさんが植木鉢の下にいたヘビを撮影したのでとの問い合わせがあり、写真を転送いただいて驚きました。特徴的な背中の線からタカチホヘビでした。(写真⑤⑥) 急いで駆け付け無事ゲットし、筆者が宇治田原町で発見して以来、他には屍確認記録2例があるだけの大変珍しい蛇であることを伝え、疋田先生を通じて京大の研究室に託しました。
今年は蛇の当たり年、やはり珍蛇のジムグリ(写真⑦)は名前の由来も「地にもぐる」希少な夜行性でめったにみられない珍蛇が、宇治田原町の藤林治夫さん(写真⑧右)や南山城村からも届けられ計3匹勢ぞろいです。お腹の市松模様が特徴の日本一美しいヘビは、アオダイショウにシマヘビと共にイベントで活躍してくれました。母校の城陽市立富野小学校の生き物クラブの指導にも欠かせない、生きた教材の中でもヘビやスッポンは大人気です。(写真⑨) さすがにマムシ(写真⑩)やヤマカガシの毒ヘビはご法度ですが、外来動物御三家のアライグマ(写真⑪)とヌートリア(写真⑫)にハクビシンのも持参し、生態系を撹乱する外来生物の被害と駆除の現実を教えています。
以前、ゴキブリホイホイにやはり珍蛇のシロマダラがかかり、学会で報告したことがありましたが、荒見神社の宮司・青山浩然さん(写真⑬右)からはヒバカリが届き、無事ベタベタを拭い取って放してあげました。荒見神社は昔から白蛇が目撃されていて、何度か緊急連絡をいただくも会えずじまいでしたが、新たな朗報に胸が高鳴りました。「この前は青いヘビを見ましたわぁ。アレは何ですかねぇ。」…およそ京都府では記録の無いヤマカガシの色素変異個体で、アオダイショウの突然変異個体の白蛇にも勝るとも劣らないお宝生物です。
夏休みの終わりに四国水族館を訪れ、未確認生物・ツチノコの企画展に学んできました。(写真⑭) 爬虫類派ナチュラリストの究極の夢・ツチノコ発見!の実現の前に、先ずは青いヤマカガシで弾みをつけたいものです。森田好幸君(写真⑮左)と中尾りく君を荒見神社のサポート調査員に大抜擢し、冬眠明けシーズン到来を楽しみにしているところです。
蛇談義でもいとまがない爬虫類派たちの話題。来年に持ち越し報告のとりとめのない話にあらためてお付き合い下さい。よいお年を。

最新の記事はこちらから