【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

コロナの悪夢から解放されて迎えた2024年元旦、能登半島を襲った大地震に、ただただ早期救出と復興支援を願っての初詣となりました。亡くなられた人々のご冥福をお祈りし、被災された方々に一日も早い安堵の日が訪れることを祈念しています。

本紙、新春号「ナチュラリストからの年賀状」でのご挨拶から早ひと月が経とうとしています。還暦から干支もひと巡りの年男の今年、まだまだ元気でフィールド探査に奔走し、ナチュラリストの本分である郷土の自然保護に貢献できる成果を得られることを願っての2024年初頭、早速おめでたい生き物情報が届いて幸先の良い始動となりました。

これまで、南山城地方においてはもうこれ以上ないと思われるほど野生生物の生息リストを発表してきましたが、新たな発見はさらなるフィールドの夢を呼び起こし、何より自分でしか成しえないと思える自信に後押しされての数々の記録はナチュラリストの証となる人生の財産と感じる歳となりました。これからは、これらの記録を次代に引き継ぐべく作業に従事し、希少野生生物と共に生態系を攪乱する外来生物に焦点を当てて残り少ない時間の有効活動を考えています。また、年間最大行事と位置付けてきた所属学会での研究成果の発表も、背伸びをしないでフィールド探査を楽しむ延長線上の活動と気楽に考えるように努めます。

2024年最初の活動報告は、辰年の話題にふさわしい瑞祥の幻獣・白タヌキにまつわる四方山話で幕開けです。今年もフィールド最前線の話題に関わる情報を取り入れ、過去の記録をひもときながら改めて郷土の環境資料となる文献記録を残す機会となることを願っています。昨年の珍蛇・タカチホヘビ発見! に続く読者からの情報提供も期待しています。充実の月間報告にお付き合い下さい。

◎2024年1月を振り返って

 

三ケ日明け早々、所属する「日本鳥学会」がさらなる鳥学の発展及び学会基盤の確立と将来的発展を確保するために、1月4日に登記を終え、「一般社団法人日本鳥学会」が設立されたとの報告を受けました。1987年度の日本鳥学会山梨大学大会で、巨椋池干拓田のコミミズクの研究で学会デビューを果たして以来今日まで、ケリにシギ・チドリ類、フクロウにオオタカ、コアジサシなど、檜舞台での発表は共同研究も含めて30題余りにのぼります。

1990年の金沢大学大会では、江戸時代の宇治の文芸茶師・上林清泉が遺した「鳥禽の図」の解析で、NHKや全国紙の夕刊一面トップ記事で報じて頂きました。ライフワークとする「南山城・鳥類目録」では、1999年度東大大会で当時の市町村と主要フィールド別に野鳥の生息状況を明記し、以後追補と改訂を重ねてきました。京都府のレッドデータブック完成に関連して、2001年度の京大大会と翌年の日大大会では、レッドリストに記載された希少鳥類の現状と変遷を報告しています。

また、宇治市の「市の鳥制定委員」や宇治田原町の「野生生物生息環境調査」に南山城村の「花鳥の郷プロジェクト」に携わり、それぞれの成果を鳥学会大会で発表し、2012年度の100周年記念大会でば現在の活動母体である「城陽環境パートナーシップ会議」名で権威ある学術団体の研究発表に記録を刻めたことを誇りに思っています。そのお役目も終わりつつありますが、全国各地で鳥人ナチュラリストの活動資料が活かされることを願っています。

さて、1996年度の沖縄国際大学での大会では、ケリの研究発表資料に添えて、環境庁の標識足環を装着した「白ツバメ」の報道記事を配布しました。山城町で見つかった白いツバメは、目も真っ赤な完全アルビノと呼ばれる色素異常の突然変異個体で、メンデルの法則通り4羽のひな鳥の内1羽だけの出現でした。後の情報で、奈良の平城宮跡や鹿児島県で白いツバメが観察されていることが分かり、天文学的な発生率から標識放鳥した同一個体だろうかとの夢が拡がりましたが続報は届きませんでした。

当時も、10万分の1や100万分の1の発生率で、白い生き物は神の使途とされ、元号の白雉は瑞祥の白いキジ、霊亀も白いカメの出現により改元されたと言われています。聖武天皇に献上された白い雀や、不老長寿の薬として帝に献上された白いスッポンなどの記述が紹介されました。そして1月6日、兵庫県丹波篠山市で白い雀が見つかったとのマスコミ報道があり、新年早々の縁起の良いこの知らせには続編がありました。

それもゆかりの地・南山城村で、猟師仲間の古田朝毅さんから長女の芽鈴さんが撮影された謎の生き物の問い合わせ画像を見てぶっ飛びました。まぎれもなく瑞祥の幻獣・アルビノタヌキ(写真①)でした。近年話題になっている広島・安芸の宮島の白タヌキの資料映像も引っ張り出し、「見ると幸せを呼ぶ幻の白いたぬき」の画像にうんちくを添えてナチュラリスト仲間たちに分かち福の朗報発信です。(写真②③)

1月18日の夕刻に忽然と現れては消え、以後姿を見ることもできない正に幻の白い幻獣も、ネット検索から香川県の「しらとり動物園」で昨年保護された個体が見られるようで、やはり500万尾に1尾とネットで報じられている四国水族館の白ウナギ(④⑤)と共に参拝の価値大有りです。元京都水族館の館長で懇意にしている四国水族館の下村実さん(⑥左)から白ウナギの資料画像を送ってもらい、迫力ある映像が白い龍に見えるとの嬉しい報告もライン仲間から届きました。辰年・年男のこだわりナチュラリスト、今年の初詣には和歌山の紀三井寺の白龍大明神と名古屋の白龍神社に、TVニュースで知った京都市竹田の北向山不動尊に新聞紙アートの神龍参拝に行ってきました。(写真⑦⑧⑨)

鉄道マニアにして博物館や動物園などミュージアム巡りを、趣味を越えた生きがいとするロートルナチュラリスト、今年のお取り寄せカレンダーも12枚目まで見届けたいものです。(写真⑩) PS会議の新年会もン年ぶりに解禁となって、復活した我が家名物・自然の恵みの会のナチュラリスト仲間たちと囲むジビエの鍋に、アルコール濃度と血糖値も急上昇のハイテンション・ハッピーな1月を過ごしています。(⑪⑫) これらナチュラリスト仲間たちとの活動と、続・瑞祥の生き物談義の次号をお待ち下さい。