【第363号】フィールド活動に華を添える神獣エピソード

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【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

古来より瑞祥の神獣と称されてきた白い生き物たち。そんな縁起の良い生き物情報で2024年が始まりました。南山城村に突如出現した白いタヌキは、以後確認されることなく幻のごとく消え去りましたが、長いコロナ禍でフィールドに夢を描けなかったロートルナチュラリストにとっては本格始動に向けての何よりの朗報となりました。

郷土の希少野生生物の保護と生息環境の保全を掲げ、ライフワークとするフィールド探査で野生生物と共に生態系を攪乱する外来生物の把握に努め、城陽環境パートナーシップ会議を活動母体に啓蒙活動に奔走してきましたが、2020年初頭からのイベント中止や規制によっておよそらしからぬ生活を強いられていました。所属学会での研究発表の場も閉ざされ、我が家名物・スッポン鍋を囲む懇親会も開催できない状況は、フィールド活動も目標を失ってテンションも上がりませんでしたが、昨秋にエコキッズによるアカハネオンブバッタという外来種の発見に元気をもらって調査意欲もわいてきました。

季節的にも来季の課題としたアカハネオンブバッタの生息調査予定の過程で、現在、京都府への侵入が危惧されている特定外来生物・クビアカツヤカミキリの存在を知り、講習会にも参加して最優先課題として取り組む決意に至ってやっとナチュラリストの日常が戻ってきました。桜や梅・桃などに壊滅的な被害を与えるクビアカツヤカミキリの実態と早期発見による防除の必要性を学び、奈良市や枚方市など生息地を隣接府県に拡げていることから既に京都府に侵入している可能性もあります。ここはフィールド派ナチュラリストの出番とばかりに名乗りをあげました。

こうした明確な目的があり、地域に貢献できる調査活動こそナチュラリストの本分です。行政や農家組合などと連携し、南山城全域の桜の名所や梅林・桃畑でクビアカツヤカミキリ生息の痕跡調査が今年の活動の柱としています。梅・桃から桜の季節、花を愛でる人たちにも危険な外来昆虫の存在を知ってもらい、情報の窓口が拡がることを願っています。

こうしたナチュラリストの想いに天から届いたエールが瑞祥の神獣の情報でした。くしくもクビアカツヤカミキリの講習会のあった1月18日の夜、南山城村の猟師仲間から届いた白いタヌキの画像にテンションもMax、すぐにでも駆けつけこの目で確かめたい大発見でした。「自然の中での宝探し」、フィールド探査の魅力は様々な発見があることで、憧れの鳥や未知なる生き物との出会いが更なる夢を拡げてくれます。そんなお宝生物の中でも神の使途とされる白い生き物たちの情報は別格で、停滞続きのフィールド復帰にも弾みがつく朗報でした。

初詣の荒見神社の白龍おみくじ・大吉のご利益で、充実の幕開けとなった2024年、活動報告1月の続編も盛りだくさんの内容となりました。雑多な話題のフォトレポートにお付き合い下さい。

◎続・2024年1月の活動報告

 

先ず始めに、『この生き物は何でしょうか。お教え下さい。』と画像を送信いただいたのは、南山城村最東部の三重県境に住む猟師仲間の古田朝毅さんで、西城陽高校に通う長女の芽鈴さん(写真①右)が1月18日の夕方に発見して撮影されたものでした。いつもの山里の田んぼの脇で始めて見た白い生き物が、古来より神の使徒・瑞祥の幻獣と称されるたいそうな生き物で、早速、芽鈴さんの幸運にあやかって城陽環境パートナーシップ会議で大発見のお宝動物のポストカードを試作しました。(写真②) やはり幻の神獣は二度と現れることはありませんでしたが、全国発信の貴重な記録を残すことができ、ローカルナチュラリストのフィールドロマンに幻の白いタヌキの頁が加わりました。

これまで、こうしたアルビノや白変種と呼ばれる色素異常の突然変異個体の特筆すべき記録を紹介してきましたが、白蛇や白い鳥の記録は稀にあるものの、哺乳類の記録は南山城地方では初のことです。宇治田原町で、白い狐が稲荷神社に出たとの聴取記録を得ましたが、戦前の古い伝聞記録は新聞報道や写真などの記録がない限り認められるものではありません。最近では、2017年5月に和束町で保護された白いカラスなど、地元のこれまでの記録と共に文献調査で情報収集を行っています。

改めての詳細報告に先立って、前回にふれた山城町の白ツバメの標識放鳥の記録をご覧下さい。1996年度の沖縄国際大学大会で公表し、その後の日本鳥類標識協会大会で研究発表の配布資料としたものです。(写真③) 環境庁の標識足環番号を明記し、孵化環境などの概要と生育記録の各部の測定値に、マスコミ報道記事を添えることで責任の所在が明確な公的意義を持つ郷土の環境資料としての報告です。今ではSNSなどで情報発信されていますが、フェイク動画など玉石混交の中、やはり貴重な記録は大衆の目をフィルターとしたマスコミ報道がベストでしょう。南山城村での白いタヌキの発見も、京都新聞にリークして報道して頂きました。

さて、「城陽環境パートナーシップ会議」の新年会に続く今年初のイベントは、1月27日に古川流域の自然観察会で始まりました。古川の水質調査や清掃活動も取り入れ、もう20年も続く冬期恒例の観察会で記録された野鳥は79種類にのぼり、今年もカワセミなど27種類を確認しています。(写真④⑤)

講師陣には40年来の鳥友・竹野功璽さんと秋井信幸さんをメインに、田部富雄さんに鳥垣咲子さんたち地元の野鳥調査メンバーが解説にあたりました。1990年当時、古川小学校の児童たちとバードウォッチングに魚やカメを捕獲して観察した野外実習授業の時の担任・野村隆俊先生が、今や野外活動の相棒として今回の観察会もサポートいただいています。竹野さん・野村先生には、富野小学校の生き物クラブの指導もお願いしていて、今回の参加者26名の内の唯一のジュニア参加者がクラブ員の石田耕晴君で、夏休みにはみんなして参加できるバスツアー研修会の企画も持ちあがりました。(写真⑥)

1月18日のクビアカツヤカミキリの講習会では、城陽環境PS会議の大野和宜会長は風邪で参加できずに残念でしたが、ここでも心強い相棒の竹野功璽さんと参加し、講師の宗實久義氏(写真⑦中)から危機的状況にある被害の実態をお聞きし、京都府でも早急に取り組まなければならない緊急課題であることを実感しました。(写真⑧⑨⑩) 今年のガイドブック作製でも外来生物編を予定していて、クビアカツヤカミキリでも駆除や防除に役立つ資料となればと考えています。微力ながらも、侵略的外来生物の根絶に貢献できる働きができることを願って準備を始めています。

そしてもうひとつ、1月15日に京都市の天然記念物・ミナミイシガメ(写真⑪)の指定解除のニュースが飛び込んできました。その要因が外来種であるとのことでした。いよいよミナミイシガメが天然記念物指定解除になりそうだと聞いたのは、11月27日の城陽市環境フォーラムで講演いただいた京大名誉教授の疋田努・日本爬虫両棲類学会前会長(写真⑫右)からでした。2月も3日の京都環境フェスティバルと11日のさんさんまつりで、今年の課題である外来生物関連の発表を行います。スッポンと共に爬虫類派ナチュラリストの代名詞たるミナミイシガメと瑞祥の生き物たち続報をお待ち下さい。

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