【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

京都府への侵入が危惧されるクビアカツヤカミキリは、サクラやウメ・モモなどに壊滅的な被害を及ぼす外来生物であり、ナチュラリストにとっては最優先で取り組むべき課題とばかりに、時期的には早いもののフラスと呼ばれる幼虫の糞と木くずの痕跡を探して主だった桜並木の名所巡りを始めています。城陽特産のウメやモモも早急な対策が求められるも、当初は私有地の問題もあって行政指導での足止めで、防除には早期発見が不可欠な侵略的外来生物の調査に水をさされてテンションも下がりました。それでも、2月16日にNHKかんさい熱視線で放映された『桜が食われる 外来カミキリの被害』の特集番組を映像資料に、環境省のクビアカツヤカミキリの啓発ポスターをチラシとして関係団体やナチュラリスト仲間に配布して協力要請をしています。

本来、「自然の中での宝探し」のキャッコピーでフィールド探査の魅力をアピールしてきたナチュラリストですが、今回ばかりは目的の生き物が発見されないことを願っての真逆の調査とあってとまどいもあります。クビアカツヤカミキリの侵入をいち早く見つけて被害の拡散防止に貢献できることを願ってはいますが、発見後の地権者や関係者たちの苦労を考えると想いも複雑で憂鬱になってしまいます。

1月18日の府の講習会に参加し、その被害の大きさを知って見過ごすことのできない問題との認識を新たにし、2月3日に京都テルサで開催された「京都環境フェスティバル2024」に参加の「城陽環境パートナーシップ会議」展示ブースに、クビアカツヤカミキリの啓発ポスターを追加して緊急報告としています。また、2月11日に文化パルク城陽で開催された「さんさんフェスタ」でも、生態系を撹乱する外来生物問題をテーマに掲げ、クビアカツヤカミキリのポスター資料の掲示と啓発チラシの配布で新たな侵略的外来生物の危機が京都府にも迫っていることをアピールしました。

こうした中、城陽環境パートナーシップ会議の盟友・本城隆志市議が3月8日の市議会本会議でクビアカツヤカミキリの問題を取り上げ、もはや侵入している可能性もあり、緊急な調査が求められている現状と、発見後の対策も大変な難題が山積していることから城陽市でも危機感を持って早期に取り組んでもらいたいと要望しました。これに対して市の担当官から、『城陽市の特産物を特定外来生物の被害から守るためにも、広く農家や市民に知っていただくことが大事』と周知に努めるとの回答を得て今後の調査にも弾みが付きました。こうした背景もあり、近隣の保護団体や猟友会などナチュラリスト仲間たちの協力を得て、JAや農家組合・果樹農園などに啓発チラシを配布してもらっています。先ずはクビアカツヤカミキリの危機が迫っていることを知っていただき、調査への理解と協力を拡げることを願って関係者に配布した映像資料の効果で、逆に現地調査の依頼をいただいてイベントとしての継続活動ができればとも考えています。

昨年の「城陽生き物ガイドブック・さかな編」に続いて、今年のシリーズ第6弾を「外来生物編」の作成と決まったとたんに舞い込んだクビアカツヤカミキリ侵入警報。コロナ明けの活動再開で、古希を過ぎたロートルナチュラリストが最後のお勤めとばかりに取り組んでいる外来生物問題の最新活動報告にお付き合い下さい。

◎環境イベントと外来カミキリ調査

ナチュラリストのライフワークであるフィールド探査も、その成果が郷土の環境資料として保護に役立つことを願っての活動であり、公共性を欠いては生き物マニアの個人資料でしかありません。それだけに、「城陽環境パートナーシップ会議」を活動母体に、希少野生生物の保護と生息環境の保全を掲げ、心強い仲間たちと一緒に幅の広い啓蒙活動に従事できることはナチュラリスト冥利に尽きる本分と喜んでいます。

今回、2019年を最後にコロナ禍で中断していた京都府最大の環境イベント「京都環境フェスティバル」が通常開催され、これまで年間最大行事と位置付けて研究成果の発表や啓蒙活動の報告を続けてその歴史も10数年にわたる環境保護団体の檜舞台に、PS会議の主要メンバーたちと嬉々として臨みました。(写真①) 今年は2月3日の1日開催だけで、毎回大好評のスッポンやヘビなどの生き物展示は控えて、昨年のシリーズ第5弾となる「生き物ガイドブック・さかな編」の公示をメインに、「コウノトリ・ひかりちゃんの再飛来」や「ケリの保護放鳥」、「チョウゲンボウの繁殖」など、この3年間にPS会議で取り組んできた活動トピックスと特筆すべき希少種たちのパネル解説に、改訂版の企画進行中の「生き物ハンドブック2014・DVD版」の動画も紹介しています。(写真②③)

これまで、PS会議のアドバイザーとして参加協力いただいていた脇坂英弥君(写真④左)は、新設した「関西ケリ研究会」として参加し、鳥類学者らしい視点での発表を行っています。話題の鳥語?の鳴き声クイズなどの詳細は、当紙面「里山通信」での報告を期待しましょう。また、今年の古川野鳥観察会のメイン講師・竹野功璽さん(写真⑤左)は、野鳥の会時代からの40年来の鳥友で、退職を迎えて宇治市に戻られたのを機に、府の水産課のキャリアを見込んでの魚の調査や自然観察会の指導でお世話になっています。現在も定期的に京都府北部の鳥類調査を実施されている竹野さんに、京都府のレッドデータブックの鳥類担当者の須川恒さん(同中)をあらためて紹介し、情報提供の協力をお願いしています。

そして、こうした足かけ5年目となる環境イベントで、やましろ里山の会の山村武正先生(写真⑥中)や長岡京市環境の都づくり会議の西村日出男先生(写真⑦中)たちと再会し、ナチュラリストの尊敬する先人たちが元気で参加されている姿にこちらもパワーをもらいました。我がPS会議が誇る重鎮たち、大野和宜・会長に芦原昇・副会長、小林駿・地球環境部会長、山岡正信・自然部会長もますます元気で、自身がまだまだ若輩者であと何年間も活動できる希望を抱かせてくれています。そんな中、会場では京都府環境保全功労者表彰式があり、城陽環境PS会議が個人表彰の小林駿・運営委員と共にW受賞の栄誉に輝き、新たな門出の祝福に来年度も更なる成果を携えての参加を決意しています。(写真⑧⑨⑩)

翌週の2月10日には、PS会議の事務局・城陽市役所環境課主催の「地球温暖化防止教室」が開催され、飯田市の市民協働環境部ゼロカーボンシティ推進課気候変動対策係の係長と主事の方も参加され、市内在住の福永順氏を講師に「脱炭素カードゲーム」を体験しました。(写真⑪⑫⑬) 翌11日には、文化パルク城陽で開催された「さんさんフェスタ」で「生態系を攪乱する外来生物」をテーマに、これまでのアライグマ被害の実情と対策資料などに、昨年6月1日に「条件付特定外来生物」に指定されたアカミミガメとアメリカザリガニの駆除のマニュアルもパネル展示し、クビアカツヤカミキリの危機が迫っている現状を伝えています。(写真⑭⑮)

会場には、相原佳代子市議や谷直樹市議も訪れ、環境問題にも理解が深い元議長たちから快い支援の励ましを受けています。(写真⑯⑰) やはり心強い協力者の本城隆志市議と共にクビアカツヤカミキリの現地調査と関係団体への挨拶回りで、多くの人たちの理解と協力支援を得ることができ、今回の議会での質問に至っています。(写真⑱)

梅まつりを迎えた青谷梅林や、3月2日にウグイスの初音が聞かれた木津川堤防の桜づつみなど、城陽市の名所で外来カミキリの痕跡が見つからないのは何よりの朗報です。盛りだくさんの活動報告、続報をお待ちください。