体を包む柔らかな音「信楽焼スピーカー」受贈/平等院
神居住職(右)から感謝状を受け取る田村靜夫さん

宇治市宇治蓮華の世界遺産・平等院に、しんにょ陶器㈱(田村哲代表取締役)=滋賀県甲賀市=から信楽焼スピーカー「土音」(とおん)1セットが贈呈され、11日、同院内の浄土院で贈呈式が行われた。
同社は2000年ごろ、鳳凰堂前の阿字池の浄化作業に供する多孔質陶器を製作した縁がある。昨年、同院の神居文彰住職と会った際に「土音」の特質などを話したところ、住職が強く感心し、寄贈が実現した。

信楽焼の球型スピーカー「土音」。頭頂部に振動板がある(緋色)

素地は花崗岩を主原料とした白色の信楽土100%の信楽焼で、直径約30センチの球型。頭頂部に振動板が取り付けられている。紫式部をイメージした紫色と、信楽が舞台のNHKドラマ「スカーレット」に因んだ緋色の文様の1対。共に正面に鳳凰の浮き彫りが施されており、今回の寄贈用に製作したという。
2013年に同社会長で陶芸家の田村靜夫さんが開発を始め、19年に完成した。バンド活動をしていた田村さんが、信楽焼のタヌキにスピーカーを仕込んだら面白いのでは…と着想し、スピーカーを自作していた友人が試作。予想外の音の良さに、開発を本格化した。形や厚みなど試行錯誤を重ね、現在のスタイルに行き着いた。
土の硬さ、通気性(音の透過性)、重量感が特徴で、振動板から発された音は球内部に響きつつ、上下左右360度の空間に広がる。
贈呈式では神居住職から靜夫さんに感謝状が贈られ、試聴タイムが設けられた。
靜夫さんは、「常に音に包まれているような、体で感じる音」と紹介。神居住職は「このような柔らかい音はどこにもない。講堂などで聞く素直な音に驚かされた。伝統には、常に新しい要素がある」と話した。
今後は、行事などの場で活用するという。