初夏の夜を彩る風物詩、暗夜の奇祭として知られる県祭(あがたまつり)が5日~6日未明にかけて中宇治地域一帯で行われた。昨年から露店が復活し、宇治橋通り、県通り、本町通りの通り(延長約2㌔)を中心に親子連れや観光客など12万5000人(昨年12万人)の人出でにぎわった。
あがた祭りは、木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)を祭神とする県神社の大祭として開かれている。商売繁盛や縁結びなどを祈願する祭りのルーツは近世・江戸時代とされる。
奉書紙を束ねて球状にした梵天は神霊の依り代と言われており、深夜の梵天渡御の際に、周囲の家々が明かりを落として迎えるため「暗夜の奇祭」と呼ばれている。
■回る梵天 猛々しく渡御
祭りのハイライト「梵天渡御」は、6日午前0時すぎから執り行われた。
江戸時代に、県神社の大祭として始まったとされる祭儀。
奉書紙を束ねて球状にした梵天(ぼんてん)は神霊の依り代と言われており、深夜の渡御は、周囲の家々が照明を落として迎えてきたため、「暗闇の奇祭」と呼ばれている。
総代や信者、後援会である「木の花会」によって奉製された梵天の白い幣(へい)が幽玄に揺れる中、午前0時前に神移しの儀を挙行。
灯りが落とされ、辺りを静寂が包んだ。
漆黒の闇から、神が乗るとされる梵天が、担ぎ手たちの手で境内から旧大幣殿跡へ進み、交差点に躍り出た法被姿の男たちは息を合わせて豪快な「差し上げ」。
このあと西の鳥居前で、大地に打ち付けるように前後左右に梵天を何度も強く振った。
そして、再び交差点に戻ると、見守る人々の掛け声にも後押しされ、威勢良く「ぶん回し」を続けた。
その中心に乗った純白の神人(しんじん)は、たくさんの幣を付けた荒ぶる梵天の守護を貫徹。
最後には頭上高く担ぎ上げる「天振り回し」も披露され、厳かに奉安所へ着御された。
■無病息災や安寧を願い 厳かに神事
5日の午前10時、県神社の拝殿で「朝御饌(あさみけ)の儀」が営まれた。午後5時からの「夕御饌(ゆうみけ)の儀」では、同神社総代や後援会「木の花会」、梵天渡御実行委員会、梵天講などの代表者らが参列した。日が暮れても参拝者の長い列が続き、無病息災や地域安寧を願って神前に手を合わせていた。
■親子連れら「祭り気分」満喫
「露店祭り」の別名もあるほど例年多くの露店が出店する県祭り。夕方以降は、学校を終えた子どもたちが繰り出し、本格的な混雑に。JR宇治駅前から宇治橋通りへ続く道は午後5時までに通行止めに。並行して市消防本部などが特別警備態勢を敷き、事故や災害の防止活動に当たった。
ヨーヨー釣り・金魚釣り・くじ引きなどの縁日や、かき氷・アイスクリームといった冷たい食べ物など、参加した親子連れたちが夏祭りの気分を満喫していた。