【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】

11月30日、城陽環境パートナーシップ会議が年間最大行事と位置付ける「城陽市環境フォーラム」が文化パルク城陽で開催されました。『パートナーシップで実現する持続可能な社会』をテーマに城陽市と共催の環境イベントも今年で23回目を迎えています。

これまで「環境先進都市・城陽」を裏付ける活動成果の場として、専門家の先生方をお招きしての記念講演会も毎回大好評でバトンがつながれています。昨年の疋田努・京大名誉教授の「爬虫類の分布と気候変動」に続いて、京都工芸繊維大学・生物資源フィールド科学教育研究センター長の秋野順治教授による「アリから学ぶ生物多様性」を演題に、女王中心の家族で生活するアリの結束力が強く排他的な一面と、その周りで維持される生物多様性の秘密に迫る興味深いお話を伺うことができました。

今回も多くの協賛団体の協力があり、「アトリエ布日和」のステージ発表や恒例となった「木津川出張所管内河川レンジャー」「城陽生きもの調査隊」などの展示発表で華を添えて頂きました。城陽環境パートナーシップ会議では、「カーボンニュートラル絵画展」と「グリーンカーテンフォトコンテスト」の表彰式に続いて、循環・地球環境部会が中心となって奈良教育大学・龍谷大学の学生たちと協同で作製した「省エネ知恵BOOK改訂版」の完成報告を行いました。

かたや生活・自然部会では、城陽生き物ガイドブック第6弾となる「外来生物編」の製作発表をパネル展示で行いました。今年、パートナーシップ会議を挙げて調査に取り組んできた侵略的外来生物・クビアカツヤカミキリの警告や掲載写真の選定などの課題は残すものの、来年2月1日に京都パルスプラザで開催される「京都環境フェスティバル」でのガイドブック完成披露と配布に向けての予鈴となる発表で責務を果たしました。

そして今回の環境フォーラムでの思わぬ収穫は、ナチュラリストのアドバイザーで昨年亡くなられた山岡亮平・京都工芸繊維大学名誉教授が、基調講演の秋野順治先生の恩師であったことから、初対面の壁を超え、お導き頂いた山岡亮平先生を偲んでの我が家名物・木津川産天然スッポン鍋を囲んでの楽しい懇親会となりました。希少野生生物の保護とその生息環境保全を願ってのフィールド探査と次代を担う子供たちへの啓蒙活動をライフワークとするナチュラリストにとって、生物資源フィールド科学教育研究センター長の秋野先生はドンピシャの教祖で、早速バスツアー研修会のお願いもしています。

これら拡がる人の環が何よりの財産と感じている昨今、ナチュラリストの盟友たちに支えられて活動できることに感謝し、第23回を迎えた「城陽市環境フォーラム」の報告をお届けします。「環境先進都市・城陽」のシンボルイベントが、これからも若き後継者たちに引き継がれ、第50回の記念大会を100歳で見届ける夢も拡がりました。

とかく手前味噌になりがちな活動報告も、陰で支えて頂いている開催関係者たちに感謝し、記録を残す一助となる環境フォーラムの全容をお伝え致します。ご覧下さい。

◎第23回城陽市環境フォーラム

11月30日、文化パルク城陽・市民プラザを会場に11時から開催された「第23回城陽市環境フォーラム」は、城陽市と城陽環境パートナーシップ会議の共催で「ゼロカーボンシティ宣言」の城陽市におけるメインとなる環境イベントです。(写真①) 今回も名アナウンサー・米田亜由美さんの司会進行で始まり、筆者はガイドブック・外来生物編完成報告を行いました。(写真①) 城陽市観光協会・梅の郷青谷づくりに城陽生きもの調査隊、木津川出張所河川レンジャーの協賛団体によるパネル展示をはじめ、ワークショップでの城南衛生管理組合・環境ふれあいひろばでのブローチ作りや「どんぐりやまプロジェクト」体験コーナーのどんぐり笛を作ろう!も大人気でした。(写真③④⑤)

また、「カーボンニュートラル絵画展」と「グリーンカーテンフォトコンテスト」の作品展示がひときわ目を引き、ステージでの表彰式も行われました。城陽市では今年4月1日から施行の「城陽市ポイ捨て禁止条例」の啓発チラシ作成に際し、市内小中学校に絵画募集を行い、チラシの作製は市内2高校の美術部に依頼しました。こうしてデザインやキャッチコピーの考案で小学校低学年用と高学年・中学生用の2種類が完成し、城陽市と城陽環境パートナーシップ会議から絵画展受賞者表彰と高校美術部員たちの功労をねぎらうステージで報いています。(写真⑥⑦)

今年で8回目を迎えた「グリーンカーテンフォトコンテスト」では、ゴーヤの生育に記録的な猛暑が大きく影響する中、24点もの作品が寄せられ地道な活動が実を結びつつあることを実感しています。グリーンカーテンの実用性が伝わる秀作ぞろいの写真に、受賞作品の選定も僅差となって選外の参加者に申し訳ない思いも募ります。

こうした市民参加型の環境イベントにあって、城陽市環境課では「エコ・アクション・ポイント」のブースを開設してお知らせしています。奥田敏晴市長から2050年に二酸化炭素排出量ゼロをめざす「ゼロカーボンシティ宣言」が表明されたのは令和3年のことでした。城陽市と市民団体に事業者、そして私たち一人ひとりがそれぞれ出来ることから環境にやさしい行動の「あゆみ」として導入されたエコ・アクション・ポイントは、環境省が推進する全国共通のポイントプログラムで、環境イベントへの参加など「エコアクション」に対してのポイント付与で、電子マネーなどに変換できるシステムです。

展示ブースと共に販売コーナーも賑わい、城陽環境パートナーシップ会議の畑で育てた菜の花からできた「城陽産菜種油」も、「城陽旬菜市」の地元産の野菜や加工品に負けず劣らず人気を博しました。喫茶コーナーでは、城陽特産品を使ったイチジクケーキと梅酒ケーキ、梅ねぎ焼きに梅コロッケが安価で提供され喜ばれました。

市民プラザのステージイベントでは、コロナ禍で途絶えて久しいアトリエ布日和さんの「着物リメイクファッションショー」が数年ぶりに復活し、午前のステージをおおいに盛り上げていただきました。シルバー世代のモデルさんたちの微笑ましい表情に、癒され元気をもらえた企画が来年度以降も続けられることを期待しています。(写真⑧)

城陽環境パートナーシップ会議の大野和宜・会長と、共催の城陽市からは本城秋男・副市長からのご挨拶を頂き、カーボンニュートラル絵画展受賞者に表彰状の授与と激励のお言葉を賜りました。エコアクションを実践し、優れた作品で貢献してくれた小中学生の受賞者に、それぞれ城陽市長賞に城陽環境PS会議会長賞、ゼロカーボン賞が贈られ功績が讃えられました。(写真⑨⑩) 引き続いての第8回グリーンカーテンコンテストでは、城陽環境パートナーシップ会議の芦原昇・副会長から、最優秀賞と優秀賞、佳作の4名の受賞者にゴーヤによる省エネ実践と啓発への積極的な参加を讃え、感謝の表彰式となりました。(写真⑪) 受賞者の方々と共に、ご応募いただいた皆さまに御礼申し上げます。

続いてのステージは、「省エネ知恵BOOK改訂版」の完成報告で、2012年に製作した環境啓発冊子は主に大人用でしたが、今回は次世代の環境問題を担うエコキッズを対象に製作されました。そして、現役大学生との協働事業として取り組んだ成果は、パートナーシップ会議の本来の目標とする活動として評価されるものです。架け橋となってくれた奈良教育大学と龍谷大学の学生さんたちによるスライドを使っての発表に、平均年齢が彼らの3・4倍の当会スタッフたちも鼻高々のウルウルで見守りました。これからも、学生たちにとっても研鑽の場となる企画で頼もしい後継者育成に努めたいものです。いつの日か、今度は環境フォーラムの講師として凱旋講演してくれることをみんなで願っています。一年間、お疲れさま。ありがとうございました。(写真⑫⑬)

この他、城陽市環境課と城陽環境パートナーシップ会議が協働で取り組んでいる「どんぐりやまプロジェクト」に関連して、昨年の寺田小学校創立150周年を記念して先生と児童たちで作った「くぬぎの木の歌」と、同じく昨年の環境フォーラムで発表された深谷小学校で総合学習の時間に環境問題について考え、みんなで森や緑の大切さを歌った「どんぐりころころ」の替え歌がスクリーン上に映し出され会場に流れました。

そしてメインの環境講演会(写真⑭)には、PS会議の盟友・岡本恵理さんが秋野順治先生の講演会に参加し、これはみんなにも聞いてもらいたいと熱烈な推薦を受けて実現の運びとなりました。それでも、前回が爬虫類学者の疋田努先生で生物関係の演題が続くことと、何より面識のない先生への依頼は共通の知人を通じての紹介の労や、限られた範囲内での折衝など面倒なことも多いものです。果たして、同じ京都工芸繊維大学の教授で第20回の環境フォーラムでリモート講演頂いた伊藤雅信先生たちの顔ききもあって承諾を得られましたが、もうひとり昨年亡くなられたナチュラリストゆかりのアドバイザーのお導きを感じる出会いもありました。

動物行動学者の日高敏隆・京大名誉教授が2008年に瑞宝章を受章された折、木津川産天然スッポンでの叙勲祝賀会の話が舞い込んで以来、我が家名物・スッポン鍋を囲む「自然の恵みの会」に、日高敏隆先生(写真⑮左2)や元京大総長の山際寿一先生(同左)と共に京都工繊大のアリの研究者として知られる山岡亮平先生(同右2)の参加もありました。時に女性研究者たちを伴って鍋の会に来られ、貴重なお話を聞かせて頂いたそんな山岡先生の訃報が届いたのは昨年の春のことでした。

そして今回、環境フォーラの基調講演にお招きした秋野順治先生が、ナチュラリストのアドバイザー・山岡亮平先生の直弟子であった巡り合わせから、頼もしい新アドバイザーを得ることができ、コロナ禍で中断を余儀なくされていたスッポン鍋を囲む「自然の恵みの会」を5年ぶりに復活させての歓迎会で山岡先生を偲んでの追悼の機会ともなりました。(写真⑯⑰) あらたなナチュラリスト仲間のアリとクモの研究者は、お隣の京田辺市立・培良中学校一期生で田辺高校の出身です。これからもふるさとの環境イベントでお世話になる秋野先生との再会を楽しみにしている年の瀬です。

秋野順治先生、山岡亮平先生、ありがとうございました。合掌。