宇治田原・和束 喜び分かつ通り初め/鷲峰山トンネルが開通
和束側トンネル口から宇治田原に向けて通り初め

主要地方道宇治木屋線(犬打峠)鷲峰山トンネルが24日に開通。管理者である京都府の西脇隆俊知事、このトンネルでつながる和束町の馬場正実町長と宇治田原町の勝谷聡一町長、そして地元関係者らを乗せた車とバスが、雪が舞う和束側の坑口から「通り初め」を行い、雲間から光が差し込んだ宇治田原の空の下で事業完遂の喜びを分かち合った。同日午後3時から供用開始。宇治田原山手線を経て国道307号に合流する交差点には信号機も設置された。
 犬打峠は、古代から京と奈良の都を結ぶ重要な街道だったが、道幅が非常に狭く、急カーブが連続。降雨災害による崖崩れや積雪で度々通行止めにもなるなど、相楽地域と宇治・京都市を結ぶ最短ルートでありながら、普通車の離合も困難な交通の難所となっていた。
この峠を貫くトンネルの建設は1982(昭和57)年から、国と京都府に対する要望活動が始まり、2017年に事業着手。総事業費約122億円をかけ、遂に完成の時を迎えた。
名称は山岳信仰の霊場として知られる南山城地域の最高峰から「鷲峰山(じゅうぶざん)トンネル」に決定。
事業延長は約3・6㌔で、幅員は歩道も含めて7・5㍍~7㍍。トンネル区間の長さは2953㍍となっている。
宇治田原側から1511㍍、和束側から1442㍍の地点が町の境界ライン。
宇治田原側から約300㍍の地点には、田原小学校の児童らが将来の夢を刻み込んだ掘削石が埋められており、和束側から約200㍍のコンクリート壁の中には、和束小学校の児童らがトンネルへの思いを描いた絵が埋め込まれている。
府が直接管理する一般道のトンネルでは、登尾トンネル(福知山市~豊岡市・1777㍍)を抜いて最長。
和束町役場から、建設中の新名神高速道路・宇治田原インターチェンジまで15分程度で結ぶことになり、トンネル通過時間は約5分。
宇治市から国道163号に入るにも最短ルートとなり、観光・産業振興、防災面などにおいて、その整備効果に大きな期待が寄せられている。
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このトンネル開通記念式典は和束小学校で開催され、府と両町の関係者、国会議員、府議会議員、町議、地元自治会・関係団体、地権者、施工業者ら約190人が出席した。
西脇知事は「インフラ整備には非常に時間が掛かります。構想、計画、ルート決定、設計、用地買収、工事と、それぞれの段階で非常に多くの方々に努力いただき、開通の時を迎えられました」と式辞。ライフワークとして尽力した前和束町長の故・堀忠雄氏と、来賓として臨席した前宇治田原町長の西谷信夫氏の熱意と情熱にも敬意を表した。
続いて、和束町の馬場町長は「このトンネルは産業や防災基盤の整備につながるだけでなく、町と町がしっかり手を結び合った証でもあります」と振り返り、宇治田原町の勝谷町長は事業実現への功績者に感謝の意を表するとともに「早速、和束町のイベント告知が宇治田原町内で新聞折り込みされるなど、木津川右岸地域の活力づくりにおける重要な道となります」と力説。「地域づくりが新たな局面を迎える中、今後も京都府、和束町をしっかり連携していきたい」と未来を見据えた。
このあと、町立和束保育園児が清らかな歌声で開通を祝い、和やかに記念撮影。出席者らが車やバスに分乗し「通り初め」へと向かった。

清らかな歌声で開通を祝った保育園児と知事、地元町長、国会議員らが記念撮影