皆川博子さんの歴史小説が受賞/第34回紫式部文学賞
第34回紫式部文学賞を受賞した皆川博子さん(写真は本人提供)

宇治市は10日、女性の作者を対象にした第34回紫式部文学賞の受賞作品に、作家の皆川博子さん(94)=神奈川県在住=が著した歴史小説『風配図 WIND ROSE』(河出書房新社、2023年)を選んだ、と発表した。贈呈式は、同日発表された紫式部市民文化賞と合わせて、11月23日(土・祝)に宇治市文化センター大ホールで開かれる。
皆川さんは1972年『海と十字架』でデビュー。ミステリや時代小説など幅広いジャンルで創作を続け、86年『恋紅』で直木賞。98年『死の泉』で吉川英治文学賞を受賞。2015年には文化功労者の栄誉に輝いた。
今回の受賞作は、12世紀の北欧(バルト地方)が舞台。貿易商人による「ハンザ同盟」が作られ交易経済が盛んになる中、バルト海に浮かぶゴットランド島で生活する2人の少女と彼女らの家族を中心に物語が進んでいく。

記者発表でコメントした選考委員会の鈴木委員長

源氏物語ミュージアムで開かれた記者発表で、選考委員会の鈴木貞美委員長(国際日本文化研究センター名誉教授)が「戯曲の書き方が入れ子になって出てくるなど工夫がある。ご高齢の作家が生涯かけて、いろんな形で追求してきたことを自由に展開している所が一番の魅力だ」と評価した。
受賞に当たり、皆川さんは「私が生まれた昭和初期は、男尊女卑が当然とされており、敗戦の時、私は15歳でした…自力で生きていこうとする12世紀の少女たちに、時代を超えて共感して頂けたのでしょうか」とコメントを寄せた。
紫式部文学賞は、宇治市が「源氏物語」宇治十帖の主要舞台であることから、市民文化の向上や女性文学の発展を目指して1991年に創設された。受賞者には副賞100万円が贈られる。
今回は、昨年1年間に発表された小説27点、随筆5点、評論など4点、詩集など12点、翻訳その他3点の合計51点(前回69点)から選考した。

■「市民文化賞」受賞者も発表
宇治市は10日、第34回「紫式部市民文化賞」の選考結果を発表した。受賞作品は、松村信二さん(67)の小説『雲に棲む―槇島昭光伝―』と、宮崎周子さん(73)・健創さん(76)の研究『ドイツアルプスのリュフトル画』に決まった。奨励賞には、宇治鳳凰大学に在学する飯島栄子さん(77)の随筆『宇治歴史ひとりあるき』が輝いた。ユース賞(30歳以下)には、井手町立泉ケ丘中学校教諭の小野田磨柚さん(29)による小説『春のみなとは知らねども―女陰陽師と鬼女の散逸譚―』が選ばれた。贈呈式は11月23日(土・祝)午後1時30分から市文化センター大ホールで開かれる。