宇治川の天ケ瀬ダム下流に架かる「天ヶ瀬吊橋」のリニューアル工事が完成した。管理する宇治市は、13日(月)午前10時から一般に開放。天然木ならではの手触りや香りが楽しめる造りとなっている。
吊り橋形式の「天ヶ瀬吊橋」は1942年に架橋された。橋の長さは約54㍍、幅員は約2㍍の人道橋。宇治川周辺は『宇治の文化的景観』として重要文化的景観に位置付けられており、四季折々の景色が楽しめ、ハイカーや釣り人、観光客が利用している。
95年に修繕工事を実施して以降、大規模な改修を行っておらず、木部材でできている桁や床材、高欄が経年劣化。耐用年数が超過したため、今年1月から通行止め措置を取り、リニューアル工事に取り掛かった。
工事にあたり、市橋梁長寿命化計画に位置付け、国の交付金を活用。事業費約7600万円のうち、約4100万円を交付金で賄うことができた。
吊り橋のロープを活用しながら、木部材部分のみ更新。材料は95年当時と全て同じものを使い、床組や構造部材には強度のある西アフリカ産のボンゴシ、踏板や高欄は府内産のヒノキ材を用いた。
新しい木材であるため、完成した吊り橋は周囲の景観と色合いがミスマッチしているが、市によると「最初は、どうしても仕方がない。2年程度で落ち着き、リニューアル前のような色合いになる。今の色合いを見られるのは逆に貴重」と話した。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、不要不急の外出自粛要請が出されているが、体力や健康維持のためにウオーキングやジョギングは問題なし。天然木ならではの手触りや香りが楽しめそうだ。
■かぐわしい桧の香りと共に 宇治川の景観楽しんで
13日から一般開放が始まった「天ケ瀬吊橋」。今回の工事に当たっては、一部の構造部材を除き全て府内産のヒノキを使用。昨年秋から木材の調達を行い、2月10日から現場での作業を開始した。
朝霧橋などでは色を塗った木材を使っているのに対し、今回リニューアルした橋は無色透明の防腐剤のみで、木目調をそのまま生かした仕上がり。川辺をゆったりと歩きながら橋のたもとに立つと、かぐわしいヒノキの香りが疲れを癒やしてくれる。
施工を担当した㈱粂田建設(粂田秀一代表取締役、宇治市木幡)で工事部長を務める南雅人さん(45)によると「緩やかなアーチ状を維持しながら工事を進めるのが至難の業だった。腐食を防ぐため、木材の間隔や高さなど数㍉単位で調整を行った」といい、プロ職人による高度な技術が結集した橋である。
この日はあいにくの雨の中、散歩で訪れたという夫婦が「渡り初め」を体験。「新しくなったのを聞きつけて来ました」「歩いても揺れないし、丈夫でしっかりしていますね」と傘を差しながら満足そうな表情を見せた。
南さんは「耐久性を高めて長く使っていただくため、市の担当部署にも構造面で意見させてもらった。宇治の観光スポットとして、市民の方や観光客の皆さんなど多くの人に通ってもらえれば」と話した。