【中川宗孝(環境生物研究会・城陽環境パートナーシップ会議)】
「城陽生き物ガイドブック・さかな編」の続報もおぼつかないまま、早、師走を迎えています。10月からナチュラリストにとって嬉しいイベント続きで、ここにきてやっとコロナ禍の呪縛から解き放たれ、11月になってもジュニアメンバーたちを駆り出して外来魚調査に奔走し、12月10日の和束川を最後に淡水魚シーズンの幕引きとしています。
本来なら次年度に持ち越しテーマのフィールド探査も、淡水魚分野においてはファイナル資料たる「ガイドブック・さかな編」の完成でナチュラリストの本分を果たせたものと考えています。次代に引き継ぐこれら郷土の環境資料も、専門家の先生方と志を同じくする調査仲間たちの協力に、多くの理解ある人々の支援の賜物です。
自然環境の保全は、希少野生生物から生態系を攪乱する外来生物たちの生息状況の把握が不可欠であり、精度の高い調査資料が求められています。城陽環境パートナーシップ会議では、それまで筆者が所属学会で研究発表を続けてきた「鳥類目録」や「野生生物生息リスト」などの資料を基に、「城陽市生き物住民登録」と題したキャンペーンで広く一般市民からの情報を募って2010年3月に哺乳類から魚類までの脊椎動物を中心とした「生き物ハンドブック」が完成し、現在のガイドブックに受け継がれてきました。
これらは野外観察での活用を目的として製作されたものですが、ふるさと城陽には絶滅が危惧される希少野生生物たちがたくさん生息し、次代に引き継ぐべき郷土の自然財産と位置付け保護の必要性を訴えています。また、駆除すべき外来生物と同様に、在来種といえども農業被害や生息環境の悪化を招く特定種の激増の現状など、生態系と環境保全の対策を考える機会となればとの願いも込められています。
こうして多くの人々に知っていただき有効活用されることを願って作成されたガイドブックは、林博之先生の記念講演会で披露され、夏季恒例の今池川水辺の生き物観察会での配布に続いて、市役所環境課窓口でも受け付けが始まりました。早速、科学教室やサイエンス夏祭りなどのイベントでエコキッズたちにも進呈し、富野小学校生き物クラブの魚好きな少年たちは学校を飛び出しPS会議のジュニアメンバーとして調査に同行するなど嬉しい展開に元気をもらって奔走していました。
そして、城陽環境パートナーシップ会議の年間最大行事「第22回城陽市環境フォーラム」が文化パルク城陽で開催された11月25日、今年度の活動成果ガイドブック・さかな編をメインのパネル展示で、参加者への解説とガイドブックの進呈でその責を果たしています。爬虫類フィーバーの環境フォーラムの報告に先んじて、来シーズンは淡水魚調査もリタイア?のファイナル資料「城陽生き物ガイドブック・さかな編」完成の続報は、師走を迎えてなお川通いのナチュラリストのフィールドトピックスです。製作協力者たちへの感謝で綴るさかな編エピソード2にお付き合い下さい。

◎ガイドブック製作協力者とフィールドトピックス

コロナ禍での活動停滞はネアカなナチュラリストをブルーにし、いっきに老け込んだ想いにかられていましたが、ガイドブック・さかな編の完成で復活しました。京都府のレッドデータブック・淡水魚の執筆者でもある林博之先生には、幸運な発見の希少種たちの公式記録やとかく判別が難しい種類の同定でお世話になりました。京都府南部では生息記録の無いホトケドジョウとおぼしきものを南山城村で発見した時、林先生を通じて専門家3人に問い合わせて2人が肯定派で1人は否定派とのことで、結局口ヒゲの特徴からホトケドジョウとなりました。
こうしたエピソードには、やはり南山城村で水棲昆虫のヒメミズカマキリを発見し、3人の専門家の先生方に画像を送って報告しましたが認められず、京都府では20年前の深泥池での記録があるだけの希少種の大発見があやうくボツとなるところでした。昆虫学者や保護に携わる研究者とて目が曇ることが分かって、イタセンパラ発見時のエピソードを思い出しました。
そんな背景もあって、2010に発表した「城陽生き物ハンドブック」では、各分野の監修者にナチュラリストが尊敬する信頼すべき専門家たちが名を連ねています。淡水魚では林博之先生と、陸生貝類でもご指導いただいた琵琶湖博物館の中井克樹博士です。そして、京都に水族館ができ、爬虫類の研究者でもある関慎太郎さんが赴任されるやすぐに押しかけ、ナチュラリスト仲間に強制連行して交流の場が広がりました。水族館の魚類調査にも協力し、南山城村で発見した野生絶滅と思われていたカワバタモロコでは、人工ふ化にも成功しています。ちなみに、ヒメミズカマキリも展示していただきました。
こうして関慎太郎さんが仲間入りした我が家名物・木津川産天然スッポン鍋の会に、後に館長・副館長のコンビとなる下村実さんも加わり、中井克樹さんに林博之先生・水野尚之先生たち頼もしいさかな仲間の協力者たちに触発されてフィールド調査にも身が入りました。コロナ禍で懇談の機会がなくなった鍋の会も、環境フォーラムで「爬虫類の分布と気候変動」をテーマにご講演いただいた日本爬虫両棲類学会前会長の疋田努・京大名誉教授を囲むシシ鍋の会で復活しています。
ガイドブック作成にご協力いただいた方々にお届けし、またみんなで鍋を囲みましょうと約束してきました。人生の第4コーナーを過ぎ、ナチュラリストへの道を走りだしたエコキッズたちに託すバトンのひとつ、「城陽生き物ガイドブック・さかな編」の完成で、来年度にも希望の光がみえる年の瀬です。