県(あがた)神社(田鍬到一宮司)=宇治市宇治蓮華=の大幣(たいへい)神事が8日、中宇治地域で行われ、伝統神事が初夏の到来を告げた。
市は2012年、第1号無形民俗文化財に指定。
ここ3年、猛威を振るった新型コロナウイルスの影響はようやく薄れて、コロナ前の形式が完全復活した。
見せ場となる馳せ馬をはじめ、大幣を力強く引き摺る勇姿は市民や観光客の注目を集めた。
平安時代、藤原頼通が宇治で政務を取ると同時に始められた―という道饗祭を再現した民俗色濃い神事。
古来、旧久世郡宇治郷のまちを疫病から守り、商売繁盛や五穀豊穣を祈願するものとして受け継がれてきた。
この日、一行約100人は3つの黄色い笠を持つ大幣とともに大幣殿前から宇治橋西詰めへ。
ここでも神事を営み、宇治橋通りを進んで、親子連れや児童、市民らが心待ちにする馳せ馬では馬上、騎馬神人が神馬(しんめ)を御して激励。
神人は途中、笠につけた幣を風になびかせ気持ちよさそうに登坂を疾駆。
パカッ、パカッ、と軽快な蹄(ひづめ)の音を響かせ、宇治石油前から一ノ坂を4往復すると、沿道に詰めかけた市民らの拍手と歓声に沸いた。
そして、本町通りから再び大幣殿前へ帰着。
街中の災厄を集めた大幣は豪快に大地へ叩きつけられた。
幣差(へいさし)たちは大幣を全速力で引き摺り、後方から迫り来る騎馬神人(じにん)に急かされるように約400㍍駆け、橋上から悪病退散を願いながら水かさを増す宇治川に投じた。
大幣や騎馬神人らとともに供奉(ぐぶ)として菟道小児童も参列。
裃(かみしも)、直垂(ひたたれ)など伝統衣装を身にまとって杓鉾(しゃくぼこ)や祭具を手に練り歩いた。